こんにちは。にっぽんてならい堂の松本です。

グッと気温が上がり暖かな週末。近くの公園では早咲きの河津桜が満開に。春ですね! 春の訪れと共に「深める金継ぎと初めての蒔絵教室(割れ編)」の1回目が虚空庵で開催されました。

ピーちゃんのさえずりが心地よく響きます。

クーちゃんのさえずりが心地よく響きます。

まずは、皆さんの自己紹介。前回の欠け編を受講された後の感想をお聞きし、金継ぎの難しさと奥深さを知ったとの声や、今回の割れ編からご参加された方の金継ぎをしてみようと思ったきっかけなど、これから7回ご一緒する仲間としてご自身の思いを共有するところからスタート!

「このお皿を直したくて、金継ぎをはじめた」とお皿を持参された方や、「欠けに続き、ヒビと割れの直しも習得したい」、「金継ぎに以前より興味があり蒔絵までしっかり学んで生活に取り入れたい」とおっしゃる方など意気込みを感じました。

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今回蒔絵につながる金継ぎを教えてくれるのは、蒔絵師の行庵先生。行庵さんは漆芸の敷居の高さに危機感を持ち、「もっと広く蒔絵の世界を知ってもらいたい」、「高級品として愛でるのでなくて、日用品として使って欲しい」という思いが、てならい堂の思いとも重なり、教室の講師を務めていただいています。

直したい器の、割れやヒビの状態を行庵先生に確認していただいた後、第一回目にして、実は“割れ編の山場”と言っても良いくらい大事な「麦漆を作って接着する」工程に入っていきます。

最初に、小麦粉と水を合わせて耳たぶくらいの硬さに練っていきます。

のり漆の種類によって、乾き方や接着強度に違いがあるそう。

のり漆の種類によって、乾き方や接着強度に違いがあるそう。

次に、輪島地(輪島特有の珪藻土)と呼ばれる粉を1/4程加えてさらに練ります。

輪島地の四辺地。粒子が細かくてジャリジャリせず、堅牢な接着に。

輪島地の四辺地。粒子が細かくてジャリジャリせず、堅牢な接着に。

そして、ここに瀬〆漆を加えて、また練ります。とは言え、皆さんが気にされるのは、どのくらい練れば良いのか、その具合です。ポロポロだと器に塗りづらく、水分が多いと乾きづらい。。お一人ずつ行庵先生と確認しながら、良い具合を見極めていきます。

今日の作業はこの麦漆が要なので、とにかく練って練って練る!

今日の作業はこの麦漆が要なので、とにかく練って練って練る!

出来の良い人の麦漆を少し分けてもらったり、先生の作った麦漆とご自身の作ったものと比べてみると「塗りやすい!、全然違う!!」という声も。 教室で学ぶことの良さですね!

器にヒビがある場合、ヒビに沿って漆のスロープを作るイメージであえて“ほぞを切る”という作業を行います。これは、漆の道を作ることで蒔絵が取れることを防ぎ強度を増す効果があり、日常使いをしたい器などに適しているそう。

電動のルーターを使い慎重にヒビの中心を削ります。

電動のルーターを使い慎重にヒビの中心を削ります。

麦漆が出来たら、割れた器に筆を使って麦漆を塗っていきます。付けづらい時は少し多めに塗ってあとで取ります。

片面は少し、もう片方を厚めに塗って調整します。

片面は少し、もう片方を厚めに塗って調整します。

塗り終えると、いよいよ接着。ここで大事なことが、“抜け勾配を意識する”こと。

割れた破片の順序を確認してからパズルのようにはめていきます。

割れた破片の順序を確認してからパズルのようにはめていきます。

少しずつ手で調整しながら、グッと押して接着します。

少しずつ手で調整しながら、グッと押して接着します。

平皿は段差が無いように調整できたか案外分かりづらいもの。「そんな時は、竹串を使って接着面の左右に滑らせ、引っかかりがあれば段差があると分かる」と行庵先生。一同、なるほど~と言った表情。仕上げに大きく影響するだけに、慎重かつ丁寧な作業が必要なんですね。

調整が終われば、マスキングテープで固定して今回の工程は終了です。

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金継ぎや蒔絵を学ぶきっかけは、皆さんそれぞれ違っても、大事にしたいことは「使い続けたいという想い」。 使い続けるために金継ぎ修理に出すことも出来ます。ただ、一歩踏み出してご自身の手で直す意味は、「この器とても素敵!食卓で使ってみたいなぁ。でも、もし割れたら…」と躊躇したり、逆に割れた時のことを見越して「必要以上に多めに購入してしまった…」、「欠けた器は縁起が悪くて使えない…」こんな不安を取り払い、「割れても大丈夫!」という安心感を手に入れることだと感じました。

金継ぎや蒔絵の工程と技術を深く知ることで、“使いながら遺す”ことを日常に取り入れ、皆さんの生活に彩りがまた一つ加わると嬉しく思います!

これから、全7回。皆さん、どうぞよろしくお願いします。