岐阜の宮大工の仕事を見る・知る・やってみるワークショップ。
宮大工。って聞いてことあるけれども、ちゃんとは知らない、そんな人も多いと思います。
神社を始めとした祈りの空間を整えてくれるのが宮大工さん。普段は一般人が立ち入ることのないその工房の中をくまなく案内してもらいます。
神社や神棚などの形の意味を教えてもらった後は、実際に木を削ってその技術を体験してみるべく”鰹木”を作ります。さて鰹木とはなんでしょう。笑
縁遠いと思っていた神社の世界が身近になり、今後のお参りのときに、ちょっと違う感覚を持てると思います。次の世代へ日本の文化を伝える意味でも、知っておいた方がいいことがそこにあります。
夏休みですのでお子様と一緒のご参加も歓迎します。
宮大工とはなんでしょう。
宮大工は、神社や仏閣などを手掛ける大工さん。お神輿や神棚など、神道に纏わる道具も作ります。なるほど、なんか凄そうだけども、私たちの生活には縁遠い感じもしてしまいます。けれども本当にそうでしょうか。
私たちにとって、神社にお参りすることはさほど縁遠いことではありません。日本人は無宗教とよく言われますが、初詣も行くし、神社やお寺があればお参りもするし、山や岩や空を見て神々しいと感じることもあります。
“祈る”ということや”まつる”ということが、それをあえて宗教とは表現しないくらいに、私たちの生活には自然に存在しています。
その”祈るための環境”を整えてくれてるのが宮大工さんです。包丁やまな板のように、日々の生活で意識して使う道具とは違う。けれども彼らがつくる形に、私たちは気づかないうちに影響を受けているかもしれません。
そんな宮大工の仕事を知るワークショップは、意外な発見にあふれ、そして私たちの生活を一段と豊かにしてくれるワークショップになると思いますよ。
岐阜の宮大工の仕事を隈無く見る!
今回のワークショップは、創業127年、岐阜にある唐箕屋本店さんの小保田社長にご協力いただきます。
まずは、唐箕屋本店さんに集合。私たち生活者がまずは入ることのない、宮大工の工房を見学させてもらいます。
中には、制作途中のお社(やしろ)やお神輿、神棚などがそこここに。その形をよく観察して、宮大工さんからその意味を教えてもらうことで、神社をお参りする時の意識が変わるのは間違いないと思います。
聞かないと全くわからないけど、聞けばなるほどと膝をうつことばかり。それを知ってどうするか?それは知ってから一緒に考えましょう。笑
宮大工の技術を見る!
宮大工の技の真骨頂は、釘などを一切使わない木組みと言われる技法ではないでしょうか。もちろん現代では釘を使うこともあるそうですが、木組みの技法は次の世代に必ず受け継がれていかなければならない技術です。
また、神社仏閣には曲線も多く、これを削るために使う鉋(かんな)のバリエーションが多いのも、大工と比べた時の違いだとか。
現代の宮大工の工房にはもちろん機械も多数入っていますが、こうした普段見られない手仕事の道具の数々も、見どころですよ。
神棚の意味も知る!
神棚もあります。デザイン性の高いものも、昔ながらのものもありますが、どちらにも役割があって、使う人がちゃんと分かって選ぶことが大切と小保田さんは言います。確かに神棚みたいなものこそ、作ってる人からしっかりと話やその意味を聞いて、安心して手に入れたいですよね。
もらってきたお札ってどうやって置いたらいいのかなんて、よくある悩み。その辺りも遠慮なく聞いてみてください。宗教家ではなくて、つくり手に聞く面白みがありますよ。
宮大工の仕事(のほんのさわり)をやってみる。
前半の宮大工の工房見学パートの後は、実際にその仕事を体験してみましょう。今回は角材を丸い柱の形にしていくという基本的な技術を、体験してもらうことにしました。
私たち素人が一からやると膨大な時間がかかってしまうので、角材を八角形にしてもらうところまでは、唐箕屋さんにお願いして、その先を鉋(かんな)や小刀を使いながら、丸く仕上げていくところを皆さんでやってみましょう。
出来上がる形、これは神社の屋根をよく見るとそこに乗ってる鰹木(かつおぎ。勝男木とも)と呼ばれる形。本物の鰹木と同じく、端っこに金具をつけて、あとはストラップになる様に組紐をつけてできあがり!
鰹木は神社の屋根の装飾です。もともとは屋根を押さえる機能だったものが、徐々に装飾化したとか。古くは古墳時代の埴輪だったり、古事記にも記述があったり。鰹木が多いほどその屋敷の位が高いという時代もあったそう。そんな鰹木ですから、あなたの作った鰹木ストラップを置けば今日からそこがお社に!笑
けどですね、てならい堂も実物を眺めてみて、なんだか妙に気に入ってます。フォルムが美しいんですよね。私たちが美しいと思えるものを、私たちが例え気づかなくても、職人は当たり前の仕事として作っているんだなあと気付かされます。
美しく作ろうとする技術を、体験してもらう。そこに今回のワークショップの意味があります。だから、まあ、何に使うかはあなた次第。みんなで考えましょう。可能性は無限大です。笑
木曽檜が伝えてくれること。
さて倉庫の奥には、ヒノキの材料がいっぱい保管されています。そう。神社に使用されるのはヒノキの木。それも木曽檜が良いとされているようです。伊勢神宮にも木曽檜が使われています。
木曽檜は岐阜長野にまたがる木曽谷にひろがる天然林でとれる樹齢100年を超える天然ヒノキを指します。木曽谷は傾斜がきつく、雨や雪も多いため、日照時間が短く木々が育つには厳しい環境です。
けれどもそれ故に、檜はゆっくりと生育し、人工林のひのきと同じ太さになるまでに倍近い、70〜100年の時間がかかります。しかし、ゆっくりと育った木曽檜は、木目が細かく弾力があって、反ったり曲がったりしづらくなるそうです。また、色も香りも良いとされます。
増え続ける需要に応えるためには早く・速くつくる必要がある。そのために技術は進歩してきました。けれども、それで出来きあがるものは全く同じではなく、何かが犠牲になっています。あるいは、早さは安さでもあります。
唐箕屋さんのお客さんも、民間の人工林のひのきのオーダーだったり、あるいはヒノキに似たもっと安い代替材料のオーダーも増えてきているそうです。
時代の流れもあるし、いろんな事情や考え方があるから、そこに対しては唐箕屋さんも何も言わないそうです。けれども、注文する側に知識がなくなってきている、それは感じるところだそうです。木曽檜を伝えていくことも宮大工の使命なんですね。
文化をつなぐために私たちができること。
文化というものは、そこに直接的に関わる人だけが繋ぐものではありません。たとえば芸術だって、演者とコアなファンだけでなくて、ライトなファンや初心者がいることで、広くて大きな網の様にその文化を支え、本物を継承していってるのだと思います。
私たちの日常の祈りの文化もそう。伊勢神宮の式年遷宮の目的は諸説あるそうですが、弟子に技術を伝承する意図もあるのではと聞いたことがあります。そうした文化の継承を職人の世界だけの話と思わずに、本当は私たち生活者こそがちゃんと知っておいた方が良いことなのだと思いました。
子供の世代に伝えるならばまずは親の世代が知ること。あなはた果たして、天然林の檜と人工林のひのきを見分けることができるでしょうか?当日はぜひ、チャレンジしてみてください。
大丈夫です。てならい堂も外しましたので(笑)。次回は当てますよ。
親子一緒にでも、大人だけでも、みんなで文化を伝えるために見る・知る・やってみるワークショップにご参加ください。
2022年8月27日(土)13:30〜15:30
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