【てならい後記】手仕事に没頭する半日。竹皮編みワークショップ、入門編。2023
こんにちは。てならい堂スタッフの五十嵐です。
冷たい雨が降りしきる日曜日の朝。窓の外には寒々とした景色が広がっていましたが、てならい堂はいつも自然素材の道具のぬくもりに満たされています。
そしてこの日は、たくさんの竹皮編みが仲間入りして、「竹皮編みワークショップ、入門編。2023」にご参加の12名のみなさんをお迎えしました。
竹皮編みは、細かく割いた竹皮を編み込んで仕立てた工芸品です。はじまりの地は群馬県の高崎市。そして、竹皮に工芸品としての価値を見出したのがドイツの建築家、ブルーノ・タウトです。
高崎市で工芸品のデザイン指導を行っていたタウトは、竹皮を材料とする雪駄の職人と出会います。これをきっかけに、タウトは職人とともにさまざまな竹皮編みを生みだしました。
この伝統的な竹皮編みの技術を受け継ぎ、その普及活動も行っているのが前島美江さんです。本日は前島さんに、コースターのつくり方を教えてもらいます。
まずは竹皮編みの歴史についてお話ししてもらいました。
竹皮編みの制作を続ける唯一の職人となった前島さん。そんな前島さんが語ることばに、参加者のみなさんも真剣に耳を傾けていました。
歴史を学んだあとは、いよいよ実践です!
と、その前に、本日のワークショップは5時間という長丁場。まずは全員で手の運動を行います。グーパッ、グーパッ、なんだか楽しくなってきましたよ。
実は前島さんの指導、ちょっとだけスパルタ的……なんて噂も耳にして、始まる前からほんの少し、ドキドキしていたんです。
「まずは私がやってみますから、みなさん、しっかり見ていてくださいね。」
メモやスマホを片手に、みなさんいっせいに前島さんのもとへ移動します。なにひとつ見逃すまいと、それはそれは真剣なまなざしです。
使用する竹皮は2種類あります。ひとつは芯材として使う岐阜県産の竹皮。そしてもうひとつは、巻材として使う福岡県八女市で生産されているカシロダケ(皮白竹)です。カシロダケはその名の通り、斑点の少ない白っぽい色をしていています。しなやかで柔らかく、竹皮編みに最適なのだそうです。
細かく割いた芯材の竹皮を数本とり、ひとつの束にする。その束をまとめるように、やや太めに割いた巻材でくるりと巻きながら、渦巻きのようなかたちをつくる。そして巻材を針の穴に通し、しっかり編み込みを止める——。
前島さんの手さばきは、実になめらかです。
「竹皮は素直な気持ちで割いてね」
「針の穴は見ませんよ。手の細胞で見て、通していくんです」
前島さんがいうと、とても説得力があります。と同時に、ほんの少し、ハードルがあがったような気も……。
でも、ここはてならい堂のワークショップ! はじめてのコトも、ちょっと難しそうなコトも、みんなで楽しんでいきましょう。
みなさん、竹皮を割いていくのはとてもお上手で、シュッ、シュッ、という音がリズミカルに響きます。
ところが、いざ紐状になった竹皮を編もうとすると、最初の一歩が難しいようで……「見てもらっていいですか?」「先生!」という声が飛び交い、しばらく前島さんは大忙しでした。
そしてここで、「スパルタ的」という前言を撤回させてください! 前島さんは一人ひとり丁寧に、じっくりと教えてくれましたよ。
のみ込みの早いみなさんは、ここから手仕事に没頭していきます。
小さな小さなコースターの芽が、ひと目でそれと分かる程の大きさになったのは、正午を過ぎた頃だったでしょうか。
「もうお昼の時間だったんですね!」
だれもが時間を忘れて進めた手仕事も、ここで一旦お昼休憩です。
後半戦は、思い思いのペースで進んでいきます。
前島さんが竹皮編みをはじめたきっかけや、タウトと同じ時代に活躍した柳宗悦についてなど、手を動かしつつも、いろいろなお話に花が咲いていました。
ワークショップの時間が終わりに近づくにつれ、丸く美しく成長したみなさんのコースターは、いよいよ最後の仕上げに入ります。
自然な円になるよう形を整えながら、再び前島さんに編み込みの止め方を教えてもらって完成です!
みなさん、最後は完成した作品をお互い見比べながら、感想を言いあっていましたね。手仕事の難しさと楽しさを分かちあったからこその盛り上がり! そんなみなさんの姿をみて、なんだかとても幸せな気持ちになりました。
前島さん、丁寧な手ほどきと貴重なお話をありがとうございました。
そして、ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました!