【てならい後記】アイヌのつくり手さんといっしょに。大切なひとや自然を思う、ものづくりの時間。
アイヌのつくり手さん、伝え手さんと一緒に過ごす2日間。ついにこの日がやってきた!
北海道の阿寒湖アイヌコタンから、アイヌ文様の刺繍を教えてくれる平良智子さん、木彫りを教えてくれる瀧口健吾さん。そしてアイヌ文化のお話をしてくれる廣野洋さんが、てならい堂神楽坂ストアに来てくれましたよ!
アイヌの方々って、実際お会いしたらどんな感じなんだろう。。どんなお話ができるだろう。。とわくわくちょっとそわそわしながら迎えたこのワークショップ前日。
お会いして少しお話しただけで、あったかい独特な、なんだか個性的な。そしてとってもやさしい気持ちになれる空気感に、すごく心地いい不思議なきもちになりました。
★アイヌにまつわるおはなし会の後記はこちらから!
*平良智子さんの<アイヌ刺繍をほどこす、マタンプシづくり>
今回、アイヌ文様の刺繍を教えてくれた平良智子さん(通称もこさん)。アイヌ文化の保存会で刺繍を行ったり、普段は阿寒湖で働きながら、夜はアイヌ舞踊も踊っているそう。
もこさんがお話するときって、自然の中で歩いているときみたいな、静かでやさしい足音みたいな感じなんですよね。(私の個人的に感じたこと。。でももこさんの声をきいた方は何となく、わかってくれるはず。)
優しいまなざしで、もこさんのいる場がじんわりと良い温度になるのを感じました。
今回の刺繍のワークショップでは、アイヌ刺繍を施した<マタンプシ>づくりをしました。マタンプシって、アイヌの人が頭に巻いている、あの美しい鉢巻きのことです!
今回、もこさんのオリジナルのアイヌ文様を準備してくれました。
それを事前にマタンプシの生地に下絵を書いてくれて、その上を縫っていきます。
行うことはとってもシンプルで、クロスステッチでどんどん縫っていきます。
糸は、自分たちの好きな色の糸をいくつかチョイス。もこさんのデザインと自分の好きなカラーのコラボです!
文様を縫いながら、阿寒湖のことや、もこさんのこと、アイヌのこと。
参加者さんとたくさんお話しながら縫っていきましたよ。
今回、2日間を通してたくさんの方が参加してくれましたが、漫画・映画の<ゴールデンカムイ>にはまって、アイヌが気になったのがきっかけ!といい方がとても多かったです!
もこさんは、ゴールデンカムイで若い人たちにもアイヌが広がっているのを見て、「なんだかすごいことが起きている。」と感じたそうです。
やはり、以前は差別だったりネガティブなことも多かったり。。
今はシンプルにかっこいい!と思ってくれる人たちの姿で、ポジティブなムードを感じているそう。
おもしろいですよね、直接アイヌの方にこんなこと聞けるのって。
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ずーっと刺繍と向き合っていると、つい集中しすぎちゃいますよね。今回とっても印象的だったのが、ところどころで「ずーっとやっていると疲れちゃうので、休みながら。無理しないで。やってきましょうね。」
そう言って、チョコとか、六花亭のバターサンドとか、みんなにおやつをくれたもこさん!
教えてくれる先生が、いきなりおやつをみんなに配る、その姿がなんだかかわいらしくて笑 癒されてみんな笑顔になっちゃいました!(てならい堂のてんちょーいわく、そんな先生今までで初めてだそう◎)
「縫い方、進め方。自由でいいですよ」と迷っている時言ってくれたり、ふとした時に、休んでねと言ってくれたり。
途中途中で、やさしくあったかく声をかけてくれるもこさんのゆるい空気感で、なんか刺繍に限らず、「何事も頑張りすぎなくてもいいのかも~」って気分になってきました。
そして、「つかれたなー、めんどくさいな、と思いながら縫うと、針が変な方に行っちゃうんですよ」と、もこさん。
作るとき、なによりも、楽しむ気持ち。そしてこれを使う人(大切な誰かかもしれないし、自分かもしれない)のことを思う気持ちが大事なんですよね。
「わたし教えるのがちょっとうまくなくて、、」なんて心配されていたもこさん。
そんなこと全然ないですし、とにかくもこさんと一緒に過ごしたこの日だけの、時間、空間、これがみんなにとってもほんとうに、貴重で忘れられないものになったんですよ。
終わったころにはみんな もこさんと笑顔になっていたのが心にじんわり残りました。
*瀧口健吾さんの<アイヌの木彫りのバターナイフづくり
アイヌの木彫りを教えてくれたのは、瀧口健吾さん。健吾さんは、自由な空気と、あたたかさの中に感じる強いまなざしが、とっても心に残っています。
この日はマユミの木を事前に健吾さんがバターナイフの形にしてくれたものに、わたしたちが好きな文様を掘っていきましたよ。(バターナイフはすこし大き目で、形もすっごくかっこいい!)
最初のほうは、健吾さんが彫ってくれたものや、アイヌ文様の資料を見ながらトライしてみるんですが、健吾さんは「自由自裁に!どんな風にやってもいいですよ」と言ってくれます。
できるだけ同じ形をとりたくない、という健吾さんならでは、みんなが彫ったもの、どんな模様もポジティブな声をかけてくれて、こっちもうれしくなってまた彫ります♪
木を彫る。
これがなかなむずかしいーー!結構マユミの木って硬い。。!木の節に添って、削りやすい向きを探していきます。
健吾さんが話すこと、とっても響く、大好きな言葉がたくさんなんです。
「世界で一本だけのバターナイフ。この今日作ったバターナイフで、ちょっとだけ世界が、人生が変わるかもしれない」
ほんとにスッと心に入ってきました。今日からこのバターナイフが、生活の新しい仲間になる。
スタッフの私も彫るのをトライしてみたんですが、難しくて、なんだか最初に思っているのと違う感じになってきた。。と「失敗したかも。。」と言ったら、健吾さん「失敗やへたはない。すべて<味>だよ」と言ってくれました。
本当にそんな気がしてきて、ちょっと不格好な目の前の自分の作品が面白くなってきました。
(これからは、木彫りに限らずいろんなことをそう思うことにしよう!)
健吾さんは、いろんなアイヌのおもしろい文化についても教えてくれました!
その中でも、おもしろかったもののひとつ、健吾さんが持ってきてくれた<シケレペ>という黒い実。
これはキハダの実なのだそうですが、アイヌの人が、風邪をひいたときや具合が悪いときに食べるもの、として伝承されてきたものだそう。
食べてみると、柑橘のようなさわやか~な風味、そしてたまにピリピリと山椒の実のようなしびれるかんじも!
なんだか胃がすーっとなってきました。しばらくして「おなかの中がさっそくぐるぐる大きく動いている感じ!」なんて方も!
こんな風に、アイヌの植物を見たり知ったりすることがないので、すごく新鮮です。
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さて、出来上がった自分だけのバターナイフをならべて、みんなで記念にぱしゃり。
どの方のもそれぞれ個性があふれていて、本当に今日だけの、世界に一つだけのバターナイフが仕上がりました!
彫ることに集中している最中「つくること、集中することは祈りと一緒。」と健吾さんが声をかけてくれたんです。
本当に、彫っているときはそのことだけに夢中で、ふと我に返った時にすっごくあったかい温泉から上がったような、瞑想していたときのような気持ちよさに包まれました。
木彫り熱中しながら、健吾さんのパワーの宿る言葉をたくさんあびて。本当に特別な時間になりました。
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この2日間で、本当にいろんな気持ちになりました。
最初、アイヌの方々とワークショップをできるとなった昨年。アイヌのこと本当に知らないし、簡単に足を踏み入れていいのかな。。なんて少しだけとまどいもありました。
だけど、この2日間で感じたのは、シンプルにアイヌの人があったかくて、芯があってかっこよくて、おもしろくてチャーミングなところもあって。
深い文化や歴史があって、ほとんど未知の世界で何もわからないわたしたちを、とってもやさしくウェルカムに迎えてくれたことで、「アイヌという存在って、ちょっとだけとっつきにくくてこわそう?」と思っていた最初のころのきもちが完全にどこかに行っていました。
たくさんのことを楽しそうにどんどん教えてくれて、こちらもどんどんワクワクしてくる。そんな風な空気に本当にうれしくなりました。
強く思ったのは、どんなにこの日のために準備してきても、想像しても、一緒に過ごしたこの時間に勝るものはないということ。
またワークショップを一緒に過ごして、手を動かすだけじゃなくて、本当に<心が主役>のものづくりの時間だったこと。
本当にすてきな時間でした!ここには正直書ききれません。。
心が自然とオープンになった、たいせつな2日間でした。
参加してくれたみなさま、ほんとうにありがとうございました!
阿寒湖アイヌコタンのみなさん、本当に感謝しています。また会えるのを、心からたのしみにしています!