【てならい後記】季節の草木で染める、ストールの桜染め体験。2024
こんにちは。
てならい堂スタッフの五十嵐です。
今年もまた「桜染め体験」の季節がやってまいりました!
会場となるのは、東京は新宿落合にある染めの里”おちあい”。集まってくれた6名の参加者さんとともに、ひと足早く春を満喫してきましたよ。
教えてくれるのは職人の小川さん。まずは座学からのスタートです。
草木染めを分かりやすく図解している絵本を用いて、本日の工程を丁寧に説明してくれました。穏やかに語られる小川さんのことばからは、染め物に対する愛情と熱意が伝わり、みなさんも真剣に聞き入っていましたね。
本日染めるのは、真っ白なシルクのストールです。
まずは見本として、2枚の桜染めのストールを見せてもらいました。
ひとつは淡い桜色。ソメイヨシノのような白っぽい桜の花びらを連想させます。
そしてもうひとつは力強い桃色。桜というより珊瑚色に近いでしょうか。何度も染色液に浸して染めたそうですが、「ちょっと染めすぎちゃったかな〜」と小川さん。(笑)
でも、染める時間や回数を変えるだけでこれだけ違う色が表れるということは……美しいグラデーションもつくれちゃうということですね!
仕上がりをイメージしたところで、さっそく染めの工程に進んでいきます。
染め、というからには、どんな染色液なのかが気になるところ。でも、その染色液を布にしっかりと吸収・定着させるためには、染める前後に行う工程も重要なんです。
まず、染める前に行うのは、水に柔軟剤を溶かした液にストールを浸し、よくすすぐこと。これは、柔軟剤に含まれている界面活性剤に色素を吸着させる働きがあるからだそうで、家庭でもできるやり方として教わりました。
これで布を染色液に浸す準備が整いました。今回使用する染色液は、あらかじめ職人さんに作ってもらったもの。桜の花びらではなく、桜のつぼみがついた枝木を何度か煮出したもので、見た目はまるで赤ワインのようです。「ワインみたいな香りがする~!」という方もいましたよ。
重要な材料や工程はほかにもあるけれど、やはり主役はこの染色液。となると、いったいどのように作っているのかが気になりますよね……。
ということで、実際にみなさんにも体験してもらいましょう!
まず、つぼみのついた桜の枝をポキポキと折り(なんて贅沢!)、沸騰したお湯で15分ほど煮出します。湯気とともに立ち上がる香りは、けっして強いものではありません。つぼみのついた小枝だからでしょうか、野趣味のある木の香りではなく、もっと柔らかでフレッシュな香りがしました。と、赤ワインにちなんでテイスティング風に。(笑)
1回目の煮出しでは、まだまだ香りもあいまいで、液の色もうっすら赤みがかっている程度でした。
最初の煮出しをみなさんに体験してもらったところで、いよいよ真っ白なストールを染めていきます!
染色に使えるのは2回以上煮出した液なので、ここからは職人さんに作ってもらった赤ワイン色の染色液を使っていきましょう。温度や浸す時間をチェックしながら、小川さんと一緒に慎重に作業を進めていくと――。
みなさんの真っ白なストールは一瞬で桜色に! ここから10分ほどゆっくりかき混ぜながら染めていきます。
その間に「媒染液」を作ります。
媒染液は色を定着させるための液なので、染色液で染めた後の布に使用します。媒染液はさまざまな種類がありますが、今回は「ミョウバン」を水に溶かして作ります。ミョウバンをつかった媒染液は、染めたときとあまり変わらない色味に仕上がるのが特徴だそう。
再び染色液に浸したストールに戻り、10分経ったことを確認して、ストールを取り出してみました。
思ったよりしっかりと色がはいってますね! みなさん「きれいに染まってるー!」とうれしそう。
このまま乾かしたいところですが、この色をしっかりと定着させるために、先ほど作った媒染液に浸します。待つこと15分――。
できましたー!
染色液から取り出したときの色とほぼ同じ色味に仕上がったのではないでしょうか。こんなにしっかりと染まるのはめずらしいと、小川さんも驚いていました。
2度、3度と布の位置を変えて染色液に浸すとグラデーションになるのですが、今回はこの色をいかしたいということで、みなさんのストールはこれで完成となりました!
今回の参加者さんのなかに、ストールを大切な人への誕生日プレゼントにしたいという方がいました。ストールを巻いてもらい、一緒にお花見をすることを楽しみにしているのだそう。
そんなお話を聞いたら、もう心の中は春の陽気のようにぽかぽかです。
この桜色のストールが、みなさんにとって春をより豊かに過ごすアイテムのひとつとなりますように。
ご参加のみなさん、小川さん、すてきな時間をありがとうございました!