【てならい後記】鍛冶屋さんとつくる、料理が美味しくなる一枚鉄のフライパン
こんにちは。 てならい堂スタッフのさくです。
生活の一部、料理には欠かせない道具、フライパン。
機能性が高く使い勝手が良くて、量販店にはずらりと沢山の商品が並んでいます。
私が最近思う事は、そもそも道具ってそんなに沢山必要なのかなと。
便利さに隠れた沢山の消費、その在庫達はいったい何処へ行くのかなと時折気になったりします。
さて今回はその道具のフライパンを、自分達の手で作りますよ。
場所は埼玉県狭山市にある鍛冶屋さんの工房、Metal NEKO。
工房に着くと奥からひょっこり、職人の金子さんです。
フライパンって1日で出来上がるんですか…常々この体験では気になっていました。目の前の並ぶ、革手袋、エプロン、メガネ、マスク…装備はしっかり準備されています。この静かな工房からどの様に鉄の加工が始まるのでしょうか。
参加者も揃って、今回の参加きっかけと聞くと「以前、包丁作りを体験して鉄を叩く感触が心地良かった」と鉄の魅力は加工からはじまっている様です。
まずは金子さんから説明、手にはフライパンの元となる形取られた鉄板が。薄く見えますが、持つと重さをしっかり感じます。
事前に安全面の諸注意もしてもらって、早速刻印から作業が始まりました。
簡単そうに見えて、工具の使い方が意外と難しいみたいです。金槌の力加減や、角度がずれたりすると刻印が上手くいかないとか…。
刻印も無事に終えて、金子さんが沢山の燃料が入った炉に火を入れていきます。
この時の周辺温度の上昇が本当早くて、これは夏場では作業出来ないだろうなと感じました。実際金子さんは額や首筋に汗が滲んでいました。
でも今日は11月の中旬で、もう冬と言っても良い時期なのですが、秋の様な快適な気温。
あっという間に、炉の中の鉄板の一部が赤くなり、金子さんがまずはお手本を見せてくれます。なるほど…こうやって鉄に熱を加えて変化していくのですね。
金子さんが熱した鉄を支えてくれながら
「ここら辺を叩いてください。」と指示をくれます。サポートが安定していて、身を任せる様に叩くので安心ですね。どんどん形が変化していきます。
鉄を叩く音に始め驚いてしまいますが、これが鍛冶屋さん!
叩く方も一定のリズムで叩くので、道具の握り方、力加減も覚えやすい。
カン、カン、カン!と次第にこの音も心地よくなってきてしまうので不思議です。
鉄が赤い時間も数十秒なので、熱して、叩いて、熱しての繰り返し、とにかく迷わず叩く!
鉄を熱している間が一息出来る時間で、炉の炎がまた穏やかな気持ちにさせてくれます。
真っ赤な鉄を叩く度に剥がれる様に出てくる破片、酸化被膜がだんだん周辺に溜まっていきます。
酸化被膜とは熱加工する際に、鉄と酸素が結び付いて出来た錆の一種だそうで、良く見るあの赤い錆と違う性質なんだとか。
冒頭で金子さんは
「鉄の加工には沢山の燃料が必要になり、その燃料の消化による二酸化炭素の排出も最近は気にしながら作っています」との事。使っている燃料はコークスとオガ炭、木炭などの燃料です。
コークスだけでも十分なのですが、オガ炭、木炭の方が温室効果ガス削減への取り組みに繋がると。作り手として、未来の事も気に掛けている姿勢が凄いなと感じました。
さて、フライパンらしい形が見えてきたところで、お昼休憩を挟みますよ。
お昼休憩は金子さんを囲んで皆で話しながら食べました。お部屋にはMetal NEKOのフライパンやお鍋が、綺麗に手入れされていて、いい具合に艶感があります。
「錆びついた、どうしようもないフライパンってどうしたらいいですか?」という質問があり、金子さんから錆びついた鉄のフライパンがどの様に生まれ変わるのか、ご自身のSNS動画で見せてくれました。
長く使うにもどうしても、初心者には辛い錆現象。この悩みにもMetal NEKOでは、錆び取り加工・お手入れ、穴が開いても直してくれるんです。…凄い。困った時に頼りになる有り難い存在。
さて午後からは、丁寧に形造りをして行きますよ!
金子さんがガイドを書いてくれるので、叩くポイントがはっきりします。
フライパンの底面を成形する作業では、一番燃料を使い、炉もさらに温度を上げていて私たちも近づくには、少々心配なので遠くから見守ります。火の粉が凄い!
順調に作業は進み、持ち手の部分の成形へ入りますよ。年季の入った型に乗せて叩いていきます。
鉄一枚板から形作る持ち手はMetal NEKOのデザインの特徴でもありますが、これも自身で作業するので微妙な持ち具合を調整できる嬉しいポイントです。
本日はお時間の関係でここまでになりますが、最後は金子さんが微調整、油の焼き付けをして仕上げてくれます。最後の仕上がりがどうなったか後記を書きながら気になっていて、今後のフライパンがどの様に育っていくのかとても楽しみです。
自分の手で作ったフライパンは特別、大切にしたくなりますね。きっと大事に使い続ければ、鍛造は後世にも残していける道具です。勿論、金子さんの様な職人さんや、工房があってこそだと思います。
便利さばかりの道具に気を取られるのではなく、このフライパンの様に重みがあって、お手入れの手間がかかる若干の不便さと寄り添いながら、工夫して暮らしていく方が少しだけ楽しい気がします。
今回は道具についても改めて考える良い機会となりました。
金子さん今回もありがとうございました!参加者の皆様もお疲れ様でした!