金属なのに、折り紙のように折り曲げて、自分で好きな形を作れる器、”すずがみ”。

“鍛金(たんきん)”を教わって、自分の手で金槌で表面を叩いて、鎚目を付けてすずがみを完成させるワークショップです。

鍛金を教えてくれるのはシマタニ昇龍工房の職人・島谷さん。先祖代々、お寺で作られる”おりん”を作ってきた職人の技術が応用されています。

職人の様には一朝一夕にできるものではありませんが、ぜひ鍛金の楽しさにふれてみてください。

曲げて伸ばして、形を自由に変えて楽しむ器”すずがみ”

錫(すず)という金額をご存知でしょうか。水をまろやかにするので酒器などによく使われる金属です。

融点が低く溶けやすいため、溶かして型に流し込む鋳物(いもの)という鋳造技法にも向いた金属で、てならい堂では、富山・高岡の職人から受け継いで、鋳物のスプーンづくりのワークショップも開催しています。

すずの特徴に”柔らかい”ことが挙げられます。手でぐにゃぐにゃと曲げることができるんですね。

このすずの柔らかさに着目してできた器が、”すずがみ”。金属なのに、折り紙のように折り曲げて、自分で好きな形を作れます。

基準をクリアしてますので、食材やお菓子を載せて使うのはもちろん、端っこを曲げて小物のトレーにしたりと、自由自在でユニークな器です。

金槌で叩いて槌目をつけて仕上げるワークショップ

今回は”鍛金(たんきん)”を教わって、自分で叩いてすずがみに柄をつけて完成させるワークショップです。

鍛金を教えてくれるのは、シマタニ昇龍工房の島谷さん。最初に島谷さんのモノづくりを動画と実演も交えながら、教えてもらいましょう。

すずがみの表面には、”あられ”、”かざはな”、”さみだれ”と名付けられた模様が施されていますが、これは鍛金と言われる技法の応用で、すずがみでは先端に柄の付けられた特別な金槌で表面を叩いて、鎚目を付けています。

トントンと一定の力でリズミカルに叩くことで、この綺麗な紋様をつけることができます。

3種類の柄からその場でお好きなものを選んで、自分のイメージ通りに叩いて柄をつけてみてください。

金槌は思った通りのところに打ち込めないし、狙いすぎても今度は力加減がぶれていくし、、、思ってるよりも簡単ではないと思います。

職人の様には一朝一夕にできるものではありませんが、自分なりの”味”になると思いますので、ぜひ鍛金の楽しさにふれてみてください。

おりん職人の鍛金の技を活かして

島谷さんのシマタニ昇龍工房の実は代々、お経の最中に鳴らす仏具、”おりん”を作っている工房です。

仏具の会社がこんなおしゃれな器をなぜ?と、思われるかもしれませんが、syouryuのおりんは真鍮の板を金槌で叩くことでお椀状の形を作りあげていく、鍛金と言われる方法が使われていて、この鍛金の技法を活かして作られたのが”すずがみ”なんです。

すずは柔らかい金属と言いましたが、いかに金属とはいえ、何度も曲げたり戻したりしていると、金属疲労で破れてしまいます。しかし金属には叩くと強度が増す特性があるので、何度も金槌で叩くことで、繰り返し曲げ伸ばしても簡単には破れない強い”すずがみ”になります。

叩き方にムラがあれば弱いところができてしまいますから、同じ力で均一に叩くことが重要で、小さいものでも500回以上叩くそう。

柄の均等な美しさよりも、むしろその方が重要で難しい技術が使われていて、それこそが叩いて作る”おりん”製造で培われてきた技術です。

(今回は、おりん作りを教わるワークショップも同日に開催していますので、チェックしてみてください。)

鍛金の楽しさと職人の物語に触れる

実は日本人の生活様式から”仏教”が減る中で、おりんの需要も減り続けています。

けれど、代々受け継いできたその技術をなんとか繋いでいくために、鍛金の技術を受け継ぎながら、一般の生活者に届く商品として、島谷さんは”すずがみ”を生み出しました。

すずがみが発売されて以降、すずがみと似た商品も世に出回るようになりましたが、そうした背景までも真似することはできません。そしてその背景の違いは品質の違いとなって現れます。

いち生活者にすぎない私たちが、いわゆる”目利き”になるのは少し難しいことかもしれませんが、少なくとも商品の持つ”物語”を感じられる人でありたいなと、てならい堂は思うんです。

ワークショップでは、自分がイメージした通りには仕上がらないかもしれない。だからこそ自ら体験した後では、商品を見る目がきっと変わっているはず。(それは目利きへの第一歩かも。)

けれど、家に持ち帰った自分で仕上げたすずがみを見て、「あーここ、失敗しちゃったよなー」と思うたびに、同時に職人の手業の凄さを思い出してもらえれば、このワークショップは大成功だったと思います。

職人の技と、ものづくりの楽しさを味わいに来てみませんか。お子様でも大丈夫です。皆さまの参加をお待ちしています。