200年続く窯元で学ぶ。有田焼のつくり方
モダンな茶碗。ARITAポーセリンラボ
ARITAポーセリンラボは、「毎日つかう器だからスタイリッシュなものを」というコンセプトで、伝統ある有田の地で、モダンでかわいい器をつくる先駆者。
伝統的な柄をふかーいところで意識しつつも、スタイリッシュな形状でモダンに仕上げ、都内の人気セレクトショップにも必ず置かれる人気の商品。
そして、スタイリッシュながらも手に馴染む形は、洋食器とは違って必ず手に取って使う、日本の器を作り続けてきた有田の職人の”たなごころ”へのこだわり。
単にオシャレなだけでなくて、脈々と続く職人のタマシイが、そこには込められてるんですね、はい。
よくある絵付け体験っていかにも和風な商品が多いですが、オシャレでかわいくて、自分が本当に欲しいと思う商品を、さらにカスタマイズしちゃうという、わがままですけど、でも、そういう体験をしたいんですよね。
200年続く窯元で学ぶ。有田焼のつくり方
今回お邪魔する、有田製窯株式会社は1804年に弥左衛門窯として窯を開いて以来、7代、200年続く有田でも大規模な窯元さん。
伝統こそチャレンジの連続の上に成り立つものと言われますが、今でも受け継がれるそうした姿勢が、この伝統ある窯元にARITAポーセリンラボという、モダンなブランドを生み出したんですね。
今回は、まずはこちらの窯元さんで有田焼の生産工程を見学させてもらいます。
生産地に住んでいない限りは、なかなか見ることの無い、やきものの生産工程。
やきものと言えば、作家さんがろくろに向かって座ってる姿を想像する人も多いかもしれませんが、量を作る有田では主に工場で生産されています。
とはいっても、機械がいっぱいの工場ではなく、ほとんどの工程で人が作業する昔ながらのスタイル。
ざっくり工程を紹介すると、
土から生地を作り、
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これを型などを使って成形します。
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削ったり拭いたりして整えた後、
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窯に入れて、900度前後で素焼きします。
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この素焼きした状態に、柄を付けることを下絵付けといいます。
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これに釉薬(ゆうやく)と呼ばれるガラス質を溶かし込んだ薬品を掛けて、再び窯へ。
このガラス質の釉薬をかけることで、土そのものとは違う、水漏れせず汚れが付きづらい独特のつるっとした感じに仕上がります。
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二度目の窯焼きは本焼きで、1300度近い温度で一日近く焼き上げ、
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冷ますのにまた同じくらいの時間がかかります。
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商品によっては、更にこれに絵を付け(今度は上絵付けという)、
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その場合は絵の具の定着をよくするために三度目の窯へ。
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こうして焼き上がったものの、底の部分を磨いて、
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ようやく完成となるわけです。
有田の場合は、これらの工程が職人さんの分業で仕上げられています。
なお、有田焼の組合ではこうした有田焼の知識を、子供達の世代につなげていくべく様々な取り組みをしていて、webのセレクトショップの老舗、スタイルストアさんと共同で有田焼の基礎知識を紹介するコンテンツを作っています。
製造工程の動画なんかもあって、予習に見てみてはいかが?
柄にするか、色にするか。それが問題だ
ご紹介した通り、数日かかる工程がプロによる分業で行われていますので、全部をやっていだくのはちょっと難しい。
けど、窯元さんと相談した結果、柄を付けるところか色を付けるところであれば、自分でやってもらえそう、ということになりました。
全体の品質はそのままに、自分だけのオリジナルな器へのカスタマイズができちゃいます。
上の工程で言うところの、(釉薬をかける)が今回やっていただく工程です。
今回の商品ARITAポーセリンラボのお茶碗の様な、円形の模様は、通常、筋車と呼ばれるロクロに乗っけて、円を引きます。
イメージしづらいと思うので、動画はこちら。(動画は何かのフタに絵付けしてるところで、今回の商品そのものではありませんので、念のため。)
見た目よりも(いや見たまま?)かなり難しいみたいですけど、チャレンジしたい方は是非どうぞ。
もうひとつは、色釉掛け。
選べる色は〜の中から、お好みの色を選んで頂いて、釉薬の中にじゃぼん。
ムラにならない様丁寧に釉薬にくぐらせる必要がありますが、こちらはいたって簡単な作業です。
ただ、自分で選んだ色に想いを込めて器をくぐらせる、、、想いのこもった器に変身すること請け合いです。
どちらも時間にしたらわずかな作業ですが、あなたの器の個性を決める大事な工程であることは言うまでもありませんね。
両方やりたいよ、というのが人情かと思いますが、絵付けをした上に、色釉をかけてしまうと下絵は見えなくなってしまいますし、色もキレイに出ません。
両者は並び立たず、通常どちらかということですので、悪しからず、どちらか選んでください。
どうしても、という方もいらっしゃると思いますが、あんまり言うと職人さんとケンカになりますから、どうかご勘弁を(笑)。
有田焼は2016年で400年
1616年に開窯した有田焼は2016年に400周年を迎えます。
1867年のパリ万博に佐賀藩として参加し、大旋風を巻き起こすなどなど、まさに日本の焼き物史を牽引してきた産地。
そして、歴史と並ぶもう一つの特徴は、白磁へのこだわり。
やきものには粘土質を使った土っぽい素朴な陶器と、ガラス質を使った透き通る様な磁器の2種類があって、有田焼と言えば磁器、それも透き通る様に白い白磁なのです。
そして、この白さが鮮やかな柄や色の商品を生み出してるんです。
今回の企画をコーディネートしてくれたのは、産地問屋キハラさんの松本さん。
そして、お邪魔する有田製窯の松本さんはそのお兄さんです。
スマートな弟さんと、自称野獣のお兄さん。
世間でも稀なでこぼこ兄弟は、地域のことを愛しながら、お兄さんがニューヨークで展示会をしていたかと思うと、弟は上海やシンガポールのマーケットを開拓しているなど。
古くから海外へ出て行った有田の伝統を引き継ぎつつ、新しいことにチャレンジし続けるアグレッシブさが魅力の兄弟。
そんな彼らだから、この様な企画にご協力いただけました。
ほんと感謝しっぱなしのてならい堂なのです。
有田の街あるき
有田町はいわゆる観光地ではないけれど、窯元の古い煙突が立ち並ぶなど、モノづくりの街としての風情はいっぱいです。
町民の大部分がやきものに関わってると言われ、街のあちこちでやきもの街の片鱗を見つけることでしょう。
町としては広いですが、緑を眺めながらゆっくりできるカフェや、有田焼で食べるおいしい和食屋さんなど、気になるお店も多数。
近くには伊万里や唐津、長崎の波佐見などとも近く、武雄、嬉野といった古い温泉もあるので、やきものの里をゆっくり訪ねる旅も、たまにはいいんじゃないですか。