【だし】だしの道具。新潟県三条の山谷製作所でつくる「かつお節削り器」
だしに関わる道具、と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。お鍋、ざる、キッチンペーパー… だしをとるための道具がいくつか思い浮かびますね。
「だし」についての連載、今回は少し視点を変えて「だしの道具」について学んでみたいと思います。
だしの中では定番の“かつおと昆布の合わせだし”は、素材の選び方で味に大きく差が出ます。中でもかつお節はとても繊細なものだって知っていましたか?
かつお節は削って30分後から酸化が始まると言われています。削りたてのものと数日時間がたったものとは風味や香りの違いが歴然です。
一番おいしい状態のかつお節はやはり削りたてです。そして削りたてのかつお節といえば、かつお節削り器。今回は「だしの道具」として、かつお節削り器ブランド「台屋(だいや)」をつくられている有限会社 山谷製作所の山谷 俊輔さんにお話を伺いました。
山谷製作所は金物の町として有名な、新潟県の三条市にあります。1946年に創業で、大工道具の「鉋(かんな)」の木の部分、「鉋台(かんなだい)」の生産を専門としています。
鉋って大工さんが使っている木の表面を滑らかにする道具?たしかに木くずがかつお節に似てなくもないような。大工道具とキッチン用品であるかつお節削り器…あまり結びつきがないようにも思えますよね。
かつお節削り器の構造は、蓋をあけると刃のついた台が現れ、その下には削ったかつお節を受け止める箱がついています。実はかつお節削り器の台の部分は、大工道具の鉋と同じ仕組みでできているのです!
「台屋」のかつお節削り器の箱と蓋の部分はブナやウォルナットという種類の木でできていて、モダンな雰囲気です。中にはいっている削りの台の部分は、白樫という木を使っていてこちらは鉋と同じ素材だそうです。
「白樫を使う理由は基本的に硬いということですね。大工さんが使う鉋も白樫でつくられています。削っていくと、触れている部分が摩耗して減っていくんです。それができるだけないようにしたい、と思うとやはり白樫ですね。」と、山谷さんが理由を話してくださいました。
大工道具のメーカーがキッチン用品の開発に踏み出したきっかけは4年前にユネスコ文化遺産に「和食」が登録されたことから。前々から考えていたお客さんに直接届ける製品をつくりたいという気持ちが強くなり、かつお節削り器の開発に取り組みました。
1年かけてようやく完成したかつお節削り器ブランド「台屋」。その特徴や開発の話など次回お届けします。