【てならい後記】自分の“ことば“を絵本にする連続ワークショップ<8回目>
こんにちは。てならい堂スタッフのひのです。
「自分の“ことば“を絵本にする連続ワークショップ」、8回目を開催しました!今回は、奥付の活版印刷をしました。
溶かした金属を流し込んでつくられた金属製の「字の型」を「活字」と呼び、その「活字」を組み合わせて、インクをつけて印字する手法を活版印刷といいます。
お世話になったのは、1919年創業で100年以上の歴史を紡ぐ活字鋳造会社「築地活字」さん。日本国内でも数少ない活字鋳造技術を継承している会社で、活版活字の鋳造販売の他にも、ハガキやカードなどの活版印刷の受注制作もおこなっています。
当日は、活版印刷体験に入る前に、活字が保管してある棚や活字をつくる鋳造機の説明を聞きながら、活版印刷について知っていく時間となりました。
サイズも大小様々、字体も様々あり、その活字の数の多さに圧倒されました。ルビなどをふる大きさのものは本当に小さかったです。
活字のもとになるものを「母型(ぼけい)」と呼び、真鍮でできています。昔は手彫りだったそうですが、母型の職人さんも今や少なく、現在はデジタル彫刻が主流だそうです。築地活字さんは約25万に及ぶ母型を保有しており、6pt~21pまでの活字を鋳造できるそうです。
築地活字さんには、全部で6台の鋳造機があります。文字の大きさごとに異なるものを使うそうです。
鋳造機に地金(じがね)といって鉛・錫・アンチモンといった金属が配合された金属の塊を、350〜400度まで熱して溶かし、母型に流し込みます。それを冷やし固めていきます。大きさにもよりますが1分間に60ほどの活字がつくれんですって。
さて、一通りの説明の後はいよいよ、活版印刷の体験に入っていきました!
流れとしては、印字する活字を拾う「文選」、拾った活字を型にはめて配列する「組版」、手動式の印刷機で印刷する「テキン」までの流れを実際に体験しました。
この文選・組版作業が意外と難しい・・。使う文字をひろっていって、印刷する際には鏡文字で逆になるので、文字も逆並びにしていく必要がある。
さらには、いれたい文字だけでなくスペース部分も自分で組み込んでいかないといけない。このスペースのサイズはたくさんあり、それらもあわせてパズルのように組み合わせていきます。行間もどのくらい間を開けるか調整しながら木の板を組み込みます。
奥付だけなので、文字数は比較的少ないとはいえ、なかなかやりごたえがあり、頭を使う作業であったかなと思います。
全てを並べ終えたら、揃えた活字たちを印刷に向けた枠に移していき、しっかりと固定します。このとき、気を抜くと持ち上げた時にバラバラと活字が抜け落ちてしまうため、注意が必要です。ここはコツがいるため、講師の方にやっていただきました。
組版が終わったら、手動式印刷機「テキン」を使っていよいよ印刷に入ります!印刷したい文字部分が出っぱっているので、そこにローラーでインクをつけます。
何度か練習のち、がっしゃんと紙に印刷を施します。力加減で凹凸の具合が変わります。弱すぎでもインク薄くなってしまうし、強すぎてもへっこみすぎて裏面に影響が出てきてしまう。良い塩梅で押すのがポイントです。
みなさんいい感じに仕上がっていました!そして、他の印刷にはない凸凹感がやっぱり素敵でしたね!
この業界はあくまで裏方で、一般の人たちに触れることはなかった、と築地活字代表の平工さんはいいます。印刷会社が活字を買い、それが印刷で摩耗していくことで新たにつくる必要があり、それが買われる。以前はそういう仕組みで業界が成り立っていました。
それが今や、デジタル化などで活字での活版印刷自体が使われなくなってきて、需要も少なくなり、職人さんも減り、会社もなくなってきたという現状があります。今回の体験では、そういった業界の現状も体感できる良い機会となりました。
業界全体の課題はありますが、それでも、ちょっとでも活版印刷の長い歴史や職人の世界に触れることができてよかったなと思いますし、これからも残していきたい技術、続いていってほしい文化だと思いました。
貴重な体験を経験させてくれた築地活字さん、どうもありがとうございました!
参加者のみなさまもおつかれさまでした!今回で印刷はすべて終わりましたので、次回はいよいよ製本にはいります。全10回のこの講座も、なんだか終わりが近づいてきて寂しい気持ちもありますが、残りの時間も楽しんでいきましょう!