【てならい後記《前半》】できたての箒展
箒について、みなさんは普段、考えたことはありますか?
「箒はどんな色をしてますか?」
「箒で掃くと、どんな音がしますか?」
「箒はどんな匂いがしますか?」
「箒は硬いですか?柔らかいですか?」
「ちょっと美味しそうじゃないですか?(笑)」
実際に箒を目の前にして、こんな問いかけがあったら、みなさんはどんなふうに答えるでしょうか。
てならい堂では、五感をフルに使って箒のことを少しだけ知ってもらえたらいいなという想いで、五感で楽しめるような企画を実施いたしました。
それが、昨年11月半ばから1ヶ月、「見て・触れて・作る1ヶ月間」ということで、箒の展示販売やワークショップなどをおこなってきた「できたての箒展」です。その開催報告を、前半・後半と2回に分けてお届けいたします。
「できたての箒展」。あっという間の1ヶ月でした。
今回、この企画にご協力いただいたのは、まちづくり山上(やまじょう)さん。かつて箒の一大産地だった、神奈川県愛甲郡愛川町・中津に本拠地を据えて、中津箒をつくっている方々です。彼らがつくる中津箒のこだわりは、その”素材づくり”から。一時は衰退していた中津箒の復活は、一時期は入手さえ困難となったホウキモロコシの種を少しずつ集め、栽培し種を増やすことから始まったそうです。
そんな中津の地で、丹生込めて育てられたホウキモロコシをもとに、中津の箒がつくられます。
自分たちでつくった原料への自信が、そのまま箒の信頼になる。
そんなまちづくり山上さんが目指すのは「使っていて心地よく、そこにあって美しい箒」。
代表である柳川さんは、かつて暖簾分けした京都の職人から送られてきた箒の美しさに、箒づくりの復興を決意したといいます。その昔、身近な素材で気軽につくられていた箒は、いまやそのつくり方を知っている人も少なくなってしまいました。まちづくり山上さんは箒づくりの技術を継承し、現代のライフスタイルに寄り添ったアイテムを展開し、私たちに、新しい箒を見せてくれているのではないかと思います。
今回の企画で箒づくりを実際に教えてくださった、中津箒職人の一人である小林さんは、その箒の美しさに人目惚れし、「ただそれをつくってみたい」と思って、職人を志したといいます。
そんな小林さんに、この期間、箒についていろいろと教わりました。実際に中津の現地に赴いて一緒にコラボして手箒をつくったり、ひみつの小店にお招きして小さなMy箒をみんなでつくったり。
職人技は見ていて圧巻。思わず見入ってしまいました。
実際の展示販売やワークショップでは、様々な種類の箒に出会いました。
・携帯もできてしまう、冬の洋服についたホコリを掃くためにぴったりの、小さなコート箒。
・簡単に壊れないように、軽い力で片手でもしっかり埃をかき集められるような、機能性もデザイン性も兼ね備えた、手箒。
この他にも、ななめ箒、荒神箒、竹のミニ手箒、長柄箒、トモエ箒、珈琲ミル箒などなど・・・・。大きなものは135cm、小さなものは13cmまで、初めて見るような形の箒も多数ありました。こうしてみると本当にいろんな箒があるんですね。
会期中、何度かワークショップを行いましたが、みなさん、やっぱり箒を自分でつくるという経験はなかなかないので、とっても興味深く参加されている様子でした。
一つ、12/7(土)に現地の中津で行われたワークショップの様子を切り出してみましょう。この時は、代表の柳川社長による、箒、中津箒、まちづくり山上、育て方つくり方のお話にみなさん大変引き込まれている様子でした。その、箒のはじまりのお話を伺った後に、小林さんが箒をつくるデモを実際に見学し、そのあと参加者のみなさんで草選りをして、それを小林さんが選別し、一緒に手箒を制作していきました。約3時間にわたるワークショップはあっという間に時間が経っていきました。
慣れないながらも、丁寧に教えてくださる職人さんの話をよく聞き、制作に励む参加者のみなさん。
参加してくださった方々からは、
「箒の一部分だけども、自分が関わったことにより愛着が出た」
「たぶん、一緒に寝る。いや、子供の方が先にこの上で寝るかも。そのくらい気持ちいい!」
「帰ってからすぐに掃きたい。一番初めの掃きはどこにしようか考えている」(と言いながら、作業場を自分の箒で掃除してくれた方も 笑。)
といった声があがっておりました。
この他にも、会期中に行われたワークショップで実際に参加した際の感想を、みなさんから多くいただきましたので、一部ご紹介させていただきますね。
「箒を見る目線が変わりました。大切に育てるように、長く長く使っていこうと思います。ありがとうございました」
「天然素材の箒を久しぶりに手に取りました。香り・手触り・作る楽しみや苦労が、箒全体から感じられます。家の玄関に置いて、毎日身ぎれいにする度に、今日つくった時に感じたことを思い出そうと思います。ありがとうございました」
「今日のワークショップの開催ありがとうございました。最初は持ち手をこんなに固く編めるのか不安でしたが、編み進めていくうちにどんどん形になっていくのが楽しくあっという間の時間でした。また作りたい意欲満々です!出来上がった箒はしばらくは持ち歩いて洋服の埃を払い、少ししたら部屋の隅を履くために使いたいと思います。でもずっと持ち歩くだろうなー」
「材料から作られているとのお話を聞き、箒へのこだわり愛情を感じました。作ることの大変さもほんの少しでも味わうことができてよかったと思います。小さなマイ箒、大切に使います。ありがとうございまいた」
「箒愛いっぱいの大切な材料を使わせていただき感謝です。30年先が楽しみ!ぜひまた作ってみたいです」
「初めての箒づくり楽しめました。今まであまり箒を意識して暮らしてこなかったのですがこれからは箒を見る目が変わりそうです。自分で作った箒は目がバラバラですが愛着持って使えそうです。小林さんありがとうございました」
箒を身近に感じ、愛着を持ってくださったようで、嬉しい限りです。
みなさんの感想を読んでいると、今回の企画を通して、まちづくり山上さん、職人の小林さんの想いが少しずつでも伝わっていったようで、心より嬉しくなりました。
てならい後記《後半》につづく・・・。