【てならい後記】深める金継ぎと初めての蒔絵教室(欠け編・割れ編)22年春。第1回
こんにちは。にっぽんてならい堂の松本です。
初夏を感じる5月、爽やかな風と少し眩しい太陽が心地よいお散歩日和♪こちら神楽坂の「ひみつの小店」でも、窓から通り抜ける風が気持ち良く感じられました。
今日から始まる「深める金継ぎと初めての蒔絵教室」は、虚空庵さんの土曜教室と並行して、初めて「ひみつの小店」で開催する平日の教室。午前が欠け編・午後に割れ編と続き、毎週開催するという、最速で金継ぎが習得できる機会なのです!
先生は、金継ぎと共に、その装飾の源流である「蒔絵」の技法についても一緒に教えてくださる蒔絵師の行庵さん。「蒔絵」にも様々な手法があり、ご自身の作品を交えての自己紹介から、漆工芸の世界を歴史や経験に基づく金継ぎ手法の背景まで座学で深く学べるところもとても魅力。この時間があるか無いかでは、これから学んでいく“金継ぎの工程”の考え方・捉え方がおそらく違ってくるのでは?と感じます。
第一回目の今日は、皆さんにご参加の動機を伺うと金継ぎ教室にすでに通った経験がある方もいらっしゃり、少し時間が経ってしまったけれど、もう一度金継ぎに取り組んで身につけたいという思いが聞かれました。初めてご参加の方は、「震災で割れたお皿や思い入れのある器を割ってしまったので…直したくて」と温めてきた思いが今回の教室へのご参加につながったようです。
座学の後は、いよいよ作業に入っていきます。
金継ぎするお皿の状態は欠け(ヒビ)と割れ(ヒビ)で、工程が異なります。各回、比較しながらお伝えしたいと思います。
【欠け編】造形力のある「こくそ漆」を作って欠けを埋める。
「こくそ漆」の材料は、小麦粉・砥の粉・輪島地(四辺地)・生漆
①小麦粉に水を足し耳たぶくらいの硬さまで水練りする。出来たら木板の端に寄せる。
②砥の粉と水を混ぜて練る。⑴は混ぜない様に注意!
③四辺地を⑵に加えて混ぜ合わせる。
④生漆を⑶に加えて混ぜ合わせる。この段階で「こくそ漆」としても問題ないのですが、今回は、最後に「木粉」を加えて調整。
⑤最後に、⑴の練った小麦粉を混ぜ合わせて完成!
出来上がった、こくそ漆を欠けにヘラで埋めていくのですが、漆が乾くと1〜2割縮むので、お椀状に伏せたイメージで少し盛り上がるようにのせることが大切。隙間があると乾いた時に凹んでしまう為、表面はツルツルになるように仕上げます。
欠け編の作業は、ここまで。
【割れ編】接着力のある「麦漆」を作って割れを接着する。
「麦漆」の材料は、小麦粉・砥の粉と輪島地(四辺地)を足したもの・生漆
①小麦粉を水練りする(欠け編と同じ!)
②砥の粉を水練りし、四辺地を加えて混ぜ合わせる。
③生漆を⑵に加えて混ぜ合わせる。
④最後に、⑴の練った小麦粉を混ぜ合わせて「麦漆」の完成!
一見、欠け編と同じ作業の様ですが分量や粉の配合で、出来上りの状態は欠け編のこくそ漆とは全く違います!
早速、麦漆を割れた器に塗っていくのですが、割れ面の両方にきちんと一度漆を塗ることで剥離しずらくなるので、薄すぎず、でも厚すぎず…を意識してヘラで塗っていきます。
接着する際には、「抜け勾配」を意識することが大切、と行庵先生。何辺も割れがある場合は、必ず割れ片を接着する順番を意識しないと、パズルのようにうまくはまらなくなります。。
段差がないか竹串でチェックし、はみ出した漆を拭き取りマスキングテープを貼ったら、今日の作業は終了です。
こちらはマグカップの取手が取れてしまった方が初挑戦する上級なお直し。欠け編の「こくそ漆」で下地を作り、あえて取手をつけず蒔絵で仕上げるとのこと!
そして、金継ぎと並行して行う蒔絵用に金沢の木tch(こっち)というブランドのブローチを選びます。クルミの木で作られていて、どれも可愛いのです!
金継ぎの技術を身につけることで、思い入れのある器と一生涯共に過ごせる。こんなに安心できることってあるでしょうか。 皆さんの器が、ご自身の手で直すことでさらに思い出深いものとなり、生まれ変わる最終日が今からとても楽しみです!
これから、全7回。皆さん、どうぞよろしくお願いします。