【てならい後記】深める金継ぎ(欠け編)と深みにハマる蒔絵教室。7月期(第5回)
店主の中村です。
台風が来るとのことでしたが、幸い大したコトなく、今日も金継ぎと蒔絵に興ずる1日です。
冒頭に、行庵先生が骨董屋で見つけてきた掘り出しものの漆器を見せてくれました。さて、どれが一番高いでしょうか?
手前の黒いお椀は、二つとも同じように見えますが、実物は左がややマットな仕上げ、右側はピカピカです。奥の赤いお椀は蓋の内側に蒔絵が施されています。
私たちのような素人にはなかなかの難問です。というか素人すぎて、手がかりがなさすぎる、、、と思ってたら先生がきちんと見方を教えてくれました。
先生の見立てでは、奥の朱塗りのお椀、次に左手前のマットなもの、最後が一番光っている右手前の順に良いモノだったはずとのこと。
まず朱塗りのお椀は、蓋の裏に蒔絵が施されていて、お祝いの席で使われるしっかりした器であったはず。しかも相当古くて、塗られた漆が痩せてきてしまっているのですが、その素地は歪んだりしていない、これはとてもいい仕事である証拠。
さらには漆の下に透けて見える筋は、てっきり漆を塗るハケの後かと思いきや木地の木目だそうで、しっかりと密な柾目ですから相当にいい材料を使っていますね、とのこと。先日宮大工さんに木曽檜の見分け方を教えてもらいましたが、そこで教わった同じ話なのに、全く気づかなかったぁー!手がかりあったじゃん、、、
さらに同じに見える黒いお椀。どちらも塗立(ぬりたて)仕上げなのだけれども、形からして左は茶懐石などでも使われるハレの器、一方右側はピカピカ光ってさも高級感を醸してますから、生徒さんからも高級予想一番人気だった訳ですが、日常使いのケの器とのこと。
双方を持ってみると左は軽く、右は重い。軽い漆器は良い仕事か、もしくは思いっきり安い(プラスチック)かどちらかだそう。一方のピカピカは、実は油を混ぜてピカピカに見せているもの。ピカピカに仕上げる呂色仕上げならハレの器だから蒔絵をするはずで、ピカピカなのに蒔絵が施されてなかったらそれは安物だと思いますとのこと。
なーるーほーどーなー。ちゃんと知れば、手がかりしかないんですね。
そして、実際の骨董屋さんでは一番高く売られていたのはそのピカピカの日常使いの器で、一番良いものと思われた赤いお椀がなんと1400円!そして半額セールで700円!そんなことありますかね。一度、先生にくっついて骨董屋さん巡ってみたいですね。
先生は、この3つのお椀を真行草にたとえて話をされました。真行草は元は書道の言葉で、真書(楷書)、行書、草書の頭文字を取ったもの。そこから転じて、茶道や俳句の世界でも格を表す概念として使われれる言葉だそう。
そして器にも格があり、マットな塗立て仕上げのお椀(別名真塗り)のお椀が真、そして今回は蒔絵の朱塗りが行、そして普段使いのお椀が草と言えますねと教えてくれました。そうやって日本の文化は格式を使い分ける文化だったというコトですね。金額と格式はまた別ということも奥深い。
しかし、やっぱり何かの道を極める人は他の分野にも知識が豊富で、そしてそこに共通する普遍的な概念をしっかり身に付けてられている印象があります。
私たちは、ただの一生活者として何かを極める立場にはないけれど、けれどこうして色んなワークショップや教室を通じて、そこにある日本の文化や生活道具が持っている普遍的な価値に気付けたなら、それはきっと今後の生活を判断していく、大切なよりどころになるんじゃないかと思うんですよね。
って、すいません、全く別の方向で長くなってしまいました。
さて、久々にこちらの教室に参加させてもらいましたが、リピートで参加してくださる生徒さんばかりで、和気藹々。先生の癖も熟知していて、質問したり、順番を待ったり、生徒さん同士でカバーしあったり、といったタイミングが絶妙です。
それぞれに慣れてきているので、進捗も微妙に違っていたり、色んなことに取り組んでいたりで、他の人の仕事を見てるのもそれだけで勉強になるというか、単純におもしろい。まさに蒔絵を愛する行庵先生ならではの教室ですよ、ここは。
などなど、それぞれの作業が楽しく続いていきます。そんな中、行庵先生もポイントポイントでお手伝いしてくれます。下の写真は、塗った漆が重力で垂れてきて上の方が少し薄くなるから、それを見越して上の方にうすーく一本線を足しておくところ。そういう繊細な心配りと仕事の積み重ねが金継ぎあるいは蒔絵なんですね。
そして、下の作品はこれにて完成!
そしてワタシ、片付けモタモタしてたら、土砂降りになって帰るタイミング失ってしまった、、、
今回もワイワイとお疲れ様でした!また次回!