【てならい後記】お香入門の入門。焚きしめる冬の香り編
1月27日に「お香入門の入門」体験を開催いたしました!
今回講師にお招きしたのは、天然香料のみを原料とし淡路島の職人による手作業で丁寧に作られたお香を扱うブランドJuttoku.さんです。
Juttoku.さんは、日本の香文化を「自然に寄り添いながらその恵みを暮らしに取り入れてきた、日本人の心の豊かさから生まれたもの」と考えてらっしゃり、てならい堂でも何度かお香の体験をご一緒しております。
今回は【冬】をテーマに、お香の種類の一つである練香(ねりこう)をみんなでつくっていきました。
この練香、普段あまり馴染みのない方も多いのではないかなと思います。どんなお香なのかというと、練香は、直接火をつけるのではなく、灰の上にのせて炭の熱の近くで楽しんだり、あったまった間接的な熱で香りを楽しむもの。
実はこれ、平安時代の貴族が行なっていたのと同じ香りの楽しみ方なんだそうです。
実は日本のお香の歴史は長く、595年に現在の兵庫県淡路島に香木が漂着したことから始まり、平安時代になると、貴族階層を中心に「香」に対する関心が高まり、彼らの日常生活に浸透していったとされています。
季節に合わせた代表的な6種類の香りは特に「六種の薫物(むくさのたきもの)」と呼ばれているのですが、その中のひとつ、冬の香りとされているのが”黒方(くろぼう)”。
これは一番高い品格の香りで、華やかすぎず地味すぎず、しっとりしつつ、芳香な香りがします。この黒方を、昔から残っているとされる調合の記録を基につくっていきました。
そんな黒方をの調合を教わりつつ、その後は、みなさんそれぞれが”冬”をイメージして、自分の感性に従い、香りを調合していきました。
冬は乾燥するので、香りが広がりづらい、だから強い香りだちのものが良いそうな。
“自分の香り”をつくる。
自分の「なんか好きだな」という感性に従って自由につくってみる。
普段なかなかしない体験でもあり、みなさん集中して嗅覚をフル稼働させて調合にチャレンジしていました。
調合が終わり、皆さんから、いろんな”冬”が生まれてきました。
「単体ではこの香りはちょっとな…と思ったけど、混ぜてみたらいい感じに深みがでた」というような発見があったり、
そのほか、
「冬だからあったかみがある香りをいれてみた」
「春を待つイメージで、青みをいれたいなと思ってつくってみた」
「冬もすっきり起きれるような、さわやかに迎える朝をイメージした」
「春に向かって新しい出会いをイメージして、新しく出会った香りをいれてみた」
「ひだまりのような、ほんわかぼーっとする、縁側のイメージ」
などなど。
それぞれのイメージを聞いた後に、お互いの香りの”ききくらべ”もしました。
(お香の世界では、香りは”嗅ぐ”ではなく”聞く”と表現するそうです)
みなさんそれぞれ本当に感性豊かで、様々なイメージがでてきました。
それぞれの冬のイメージから、それぞれの方が大事にしている価値観やお人柄の背景も見えてくるようで、話を伺っていてとても面白かったです。
こんなふうに共有をできる場は、自分とは別の人たちの感じ方に触れる機会でもあり、より世界が広がっていく感じがして、いいなぁと改めて思いました。
調合した後は、お香を丸めるために、蜂蜜を加えて形にしていきいきました。蜂蜜以外にも木の蜜や梅肉も使ってたりすることもあるのだそう。
そして最後、自分で調合した香りにネーミング(香名)もそれぞれしていきました。
なんだかアーティストになった気分です。
でもまさにそうなんだと思います。誰もが表現者。
それは、自分の感性に素直になってみることにもつながります。
嗅覚は、視覚や聴覚以上に記憶との結びつきが強く、五感の中でも、最も原始的かつ本能的な感覚です。
普段、自分の”嗅ぐ”もとい”聞く”力をあまり使えてないかもしれないと思い直し、こういったお香の体験がその一つのきっかけにもなるんじゃないかなと思いました。
改めて、昔の人たちは、本当に微妙な香りを聞き分けていたんだなと想像すると、その繊細な日本の感性を素晴らしく思うと同時に、今に生きる私たちも、何か見直せるところがあるのではないかなとも思います。
「敏感になる」
これは良いようにも悪いようにも働くと思いますが、少なくとも、自分の五感には素直でありたいなとこの体験を通して思いました。
お香のてならい体験は今後も開催予定で、次回開催は春を予定しています。
その季節に応じた香りを皆さまにお楽しみいただきたいなと思います。
今回参加できなかった方も、今後のてならい堂からの告知をお待ちくださいませ!
それではまた。