【てならい後記】六月八日を育む森のフィールドワークショップ2024
こんにちは。店主の中村です。
今年も大分中津・耶馬溪へ。そう、エッセンシャルオイルのブランド、六月八日の森がある土地を訪ねる、フィールドワークショップへ行ってきました。
初日は里山でカボスを収穫し、その後は森を散策し、2日目は収穫したカボスの皮を剥いて蒸留し、蒸留を待つ間、アロマスプレーをつくるという、カボスづくしの盛りだくさんのワークショップ。定員15名ですが、そのうち8名の方が二日間通しで参加してくれました。
また、参加者の半数は関東から。六月八日のファンだったり、カボスの蒸留に興味があったり、昨年2日目しか参加しなくて心残りがあったり、温泉行きたい!とか、それぞれの思いを胸に、六月八日の森に集合しました。
初日は車に分乗して、まずは里山のカボス畑を目指します。9月末だというのに、今年も暑いですねー。
訪れるカボス畑は、農家さんが高齢化して収穫されなくなった、放置カボス畑。放置されているので無農薬。無農薬ということは、六月八日さんのエッセンシャルオイルづくりにもってこいの素材です。
今回は、木を一本ずつカボスの実を取り尽くしながら進めていくイメージ。日焼けと虫対策で肌を覆い隠し、軍手をして、ハサミを持って、背伸びをして、パチン!と切り落とします、、、汗だくです。
しかし、今年は暑さのせいか、カボスの生育が悪い。六月八日さんによると平年の1/5程度だそう。私たちの今日のノルマもカゴ5箱だったのですが、脚立を使って、全ての木の上の方まで取り切っても、残念ながらちょっと足りないけど、まあOKをもらって、収穫は終了。
大分のカボスは日本一の収穫量を誇りますが、この暑さがこの先も続いて、果たしてカボスの栽培に適した土地だあり続けられるのか。気候変動の影響の大きさを感じずにはおれませんでした。
それにしても想像よりもちょっとハードな収穫体験でしたが、自然の中の仕事はやっぱり楽しい!ですね。いい汗かきました。私、汗かきすぎててかなり心配されました。笑
その後は車に乗って、六月八日の森へ。森を歩きながら、杉の育成、間伐の意味、木材の経済性、人工林と天然林の違い、森林化の起こり、、、などなど都市に住む私たちが知らない、林業の実態、森のほんとうのお話を、六月八日の久恒社長から教えてもらいます。
本当に考えさせられる、考えたいお話がたくさんで、ここで全ては紹介できませんが、今日は多様性の話を紹介したいと思います。
森には温暖化を防止する機能はもちろんですが、水土保全機能というものがあります。雨が降ったら土が吸収し、地下水として川に合流して、ゆるやかに海へ運ばれていきます。これは雨の恵みを雨が降ったその時だけでなく、継続的に使い続けられるということでもあります。
もしこの機能がなければ、山に雨が降ればその全てが斜面を降って里山に街に流れ込み、雨が降るたびに洪水、ということになってしまいます。
ではどんな森が水を保全しやすいかといえば、多様性の豊かな森です。林床(つまり土ですね)にさまざまな草木が生え、生き物が豊富な状態、これを多様性のある森と呼び、こうした森は保水力が大きいです。
反対に単一の木しか生えておらず、林床には緑が見えないような森、こうした森は保水力が弱いそうです。
ではなぜそうなるのでしょうか。木がぎゅうぎゅうに繁ると、光が入らない。そうすると、土の表面には緑が育ちづらいんですね。
ではなぜそうなるのか。人は木材を採るために、杉や檜をぎゅうぎゅうに植えます。良い木材を取るためにはこれを間伐(間引いていくことですね)していくのですが、木材が売れず、放置林が増える現状では、間伐されないままぎゅうぎゅうで、光の入らない森が放置されることになります。
「お金」という尺度で判断する結果なんだと思います。
森の多様性や水資源を継続的に使えることの豊かさはお金に表しづらい。厳密に計算すれば何かしらの数字は出せるのかもしれないけど、多分、手に余る。言葉で聞けば、誰でもそれは大事だよねと感覚的に思えることが、お金で合理的に説明しろと言われた瞬間に、とても難しいことになってしまう。
多様性を守ると、外野の私たちは簡単に言えますが、お金も労力もかかる大変なことです。けれど、人が自分達のために木を植えて、森の恵みを借りようとするならば、きちんと手を入れて、奥山と里山と、そして街とが共生できるようにする必要がある。
社長のお話を聴いて、それが借りる側の作法なのだと理解しました。そして、作法というのはルールであり、美意識でもあるんじゃないですかね。だから人の手の入った森は、時に天然の森よりも美しい。
六月八日の森で、今年も様々なことを教わりました。
深いお話しを聞く間に、いつの間にか予定時間を超え、今日はこのまま森で解散です。(もちろん駅までお送りしました。笑)
さて、仕切り直しての二日目は、カボスを蒸留するワークショップ。
今日の会場は中津市にある、六月八日さんの本社兼蒸溜所。直営ショップもあります。ここは有形文化財にも登録されているすんごい建物で一見の価値ありですが、こうしたイベントごとでない限り、普段は立ち入りできません。人んちですからね。
かつてはお偉方も訪れたこの広間で、二日目から合流するメンバーをお迎えして、全員で自己紹介をして知り合った後は、さっそく、カボスの蒸留にかかります。
昨日とってきたカゴ5杯弱のカボスを洗って、ピーラーでひたすらに皮むき。部屋中にカボスの香りが充満してます。ほんといい匂い。
エッセンシャルオイルに使うのは皮だけ。だから無農薬であることが大事なんですね。
もちろん果汁は絞ってジュースにします。六月八日さんではこれをクッキーやスプレッドにしていますが、今日は特別にペットボトル一本分、自分で詰めてお土産に!
これはねー。刺身にかけても、ドレッシングにしても、もちろんお酒を割っても、とにかく万能なんですよねー。冷凍もできるし。ほんと里山の魅力ってこういうことですよね!
さて、蒸留器にかけて蒸留する間にお待ち金のランチタイム。
労働の後(あ、ワークショップですが)の身体に沁み渡る、土地のものの滋味深い味わい。そして、すべての料理にカボスが何かしらの形で使われているというセンス溢れるカボス尽くし。
昨年に続き、大満足のランチでしたねー。
食後にお茶までしっかり楽しんだ後は、蒸留の様子をちらりと確認。蒸留したての香りを香ってみましょう。
はて。これってカボスの匂い?蒸留したての香りは私たちが知ってる香りとちょっと違うみたいです。
蒸留したては香り成分は強いけど、角がある。六月八日さんでは大体三ヶ月くらい置いて、角が取れてまろやかになったものを出荷しています。
しかしなかなか嗅ぐ機会のない蒸留したての香り。とっても貴重な体験でした。
さて、もう蒸留器もう一本分の蒸留を進めつつ、一行はアロマスプレー作りのワークショップへ。
今日は芳香蒸留水と、エッセンシャルオイルを自由に組み合わせて、オリジナルスプレーを作ります。お馴染みの香りが並びますが、変わったところではヤブニッケイの芳香蒸留水でしょうか。シナモンのような香りがします。
参加者の皆さんは、普段からアロマに興味のある人が多く、それぞれに自分の香りを、そしてお隣との香りの違いを楽しんでいました。
ちょっと時間が押してて駆け足ではありましたが、スプレーを完成し、デザートにまたもやカボスを使ったお菓子とお茶をいただき、そして蒸留ほやほやのエッセンシャルオイルをお土産にもらって、二日間に渡ったフィールドワークショップは終了です。
参加者同士もそれぞれつなかったり、ワークショップ講師の関戸さんとつながったり、六月八日さんとつながったり、たくさんのつながりが生まれたんじゃないかなと思います。
昨年もそうだったのですが、とにかく六月八日さんのおもてなしが素晴らしくて、本当にありがとうございました。
六月八日さんの取り組みは、森の恵みを使ってエッセンシャルオイルやそれに付随する商品を作ることですけれども、1日目の森でお話をお伺いした通り、林業を持続可能としていくために、その付加価値を生む仕事です。
単に木材を得るのではなくて、森から生まれる価値を最大化するために、様々な取り組みを実施され、その1つとしてエッセンシャルオイルを作っている、というのが今のやり方です。
日本の多くの森が難しい状況に置かれている中で、持続的な持続可能な林業というものに、大きなヒントや可能性を感じさせてくれます。
天然の素材から生まれるエッセンシャルオイルの香りが本当に素晴らしく、その世界のプロになるほどにファンになる方が多いのですが、やはりその背景にある、森を持続的にしようというこの活動の背景の思想が、その香りに反映されてるような気がするんですよね。
これからもてならい堂では、六月八日さんの香りをご紹介を続けていきたいと思っていますし、また来年も、土地を訪ねる人フィールドワークショップで多くの方に、六月八日の森を育む土地と、直接つながって欲しいなと思います。
参加された皆さん、六月八日の皆さん、また来年!