こんにちは。
てならい堂スタッフの五十嵐です。

神楽坂の路地奥に佇む園芸店、qivaco(キバコ)さんは、いきいきとした植物たちのエネルギーにあふれた場所です。旬の草花たちは、たしかに美しく、かわいらしい。でも、それ以上に、qivacoさんの植物たちは元気で気持ちよさそうに暮らしている、そんな印象を受けました。

この日、qivacoさんで行われたのは「季節のしっかり園芸ワークショップ」。春から初夏にかけて、植物の季節の移ろいを楽しみながら、じっくりと園芸を学びます。3月からスタートした全4回の教室は、今回で最終回を迎えました。

教えてくれるのは、もちろん、オーナーのみのりさん。みのりさんの知識と技術、楽しいお話に魅了された、園芸ワークショップをレポートします!

 

本日は、夏の風物詩でもある水辺の植物について学び、寄せ植えタイプの苔玉を2種類作ります。

苔玉は、今やブームといってもいいほど大人気。簡易的なキットにもたくさんの種類があり、ありとあらゆる植物が苔玉になっているそう。

「正解も不正解もないし、手軽に作れるようになったこともいいことだけど、今日は自分らしい苔玉をつくっていきましょう。」と、みのりさん。

植物や土の感触を楽しみ、自分の感性を大切にしながら生みだす作品は、どのようなものになるのでしょうか。

素敵な素材が気になりますが、まずは初夏の植物についてしっかり学びます。

実践の前に、まずは、この季節に園芸店でよくみかける「湿生植物」と「水生植物」について教えてもらいました。この日の参加者さんは、すでに園芸を学び、親しんでいるおふたり。みのりさんのお話に、メモを取りながら真剣に聞き入っていましたね。

「湿生植物」とは、文字通り、水辺や湿原などの湿潤地に生育する植物。もらった資料にはずらりと植物の名前が並んでいます。うん、うん、と深く頷くおふたりでしたが、初心者の私が唯一イメージできたのは、イネ科の植物だけでした……。

そして「水生植物」とは、かつて水中で生活していたものが陸上生活へ適応したものの、再び水中生活へと戻っていった植物。池に生育するショウブやカキツバタ、葉が水辺に浮かぶヒツジグサなどがあります。こちらの方がイメージしやすいでしょうか。

はるか遠い昔(私の場合…)に、教科書で学んだはずのさまざまな植物たち。すっかり記憶から抜け落ちていた私にとっては、貴重な学び直しの場となりました。ご参加のおふたりにとっては、この季節の園芸をどう楽しむか、新たな発見へとつながるお話でしたね。

それでは、いよいよ苔玉づくりのパートへ入っていきましょう!

苔玉は2種類。涼しげな「シノブシダ」の苔玉と、小ぶりでかわいらしい「ヤマアジサイ」の苔玉です。

まずはシノブシダの苔玉から。
はじめに、シノブシダの根をほぐします。力を入れ過ぎると細かい根がプチプチ切れてしまうので、慎重に余分な土などを落としていきます。そうすることで、移植したところに早く根付くのだそう。

ていねいに根をほぐします。このひと手間が大事なんです!

「もうちょっと落としますか?落としすぎ?」
「全然大丈夫!」

「あ、なんにもなくなっちゃった……」
「そんなに気にしないで大丈夫、大丈夫!」

そんな会話をいく度となく繰り返しながら、余分な土を払い落したシノブシダはすっかり身軽になりました。

次は苔玉の核となる土をおだんご状に丸め、ミズゴケとシノブシダを巻きつけます。そして、外側をハイゴケで包むように丸く形成して完成……と、ことばにすると簡単なのですが、これがなかなか難しい!特に、丸い形にすることや、糸を巻いて固定することが大変そうでした。

キュッ、キュッと丸めます。「泥だんごみたいで楽しい!」と参加者さん。

難しい~といいつつも、こんなにきれいな苔玉に!

みのりさんいわく、コツは「気にしないこと」だそう。(笑)
たくさんつくることで、慣れていくしかないようですね。あまり神経質にならずに、苔のふんわりした感じをいかして、糸できつく巻きすぎないのがよいそうです。思った通りにはならなくても、焦らず、ゆっくりと感覚を養っていきましょう!

とはいえ、完成したおふたりの苔玉、なんとかわいらしいのでしょう。
大成功ではないですか!

ここで一息……つくことなく、このままおふたりはヤマアジサイの苔玉づくりへと進みます。集中力は途切れるどころか、むしろ高まっていましたよ!

ところが、このヤマアジサイの苔玉、シノブシダよりも難しいんです。

メインとなるヤマアジサイに、黒っぽくてシャープな形状の葉、コクリュウをあしらいます。「バランスを考えるときは、流れを意識することが大切ですよ」と、みのりさん。生け花にも通じる考え方なんですね。

あまり動かしすぎると草花の配置がズレてしまうことも……。

こちらはみのりさんのデモンストレーション。すでに美しい!

どこにどう配置するかを考えるのはとても楽しそう。でも、そのバランスを保ちながら、苔玉を丸く形成していくのは難しいようです。アジサイのガクに糸が引っかかりやすかったり、苔で覆うときにバランスが崩れてしまったり、と、苦戦してはいましたが、それでもおふたりの苔玉は、着々と完成に近づいていきます。

ここでみのりさんから、こんなお話が。
「私は子どものころ、工作が得意だったんです。ゼロから何かを生みだす美術ではなくて、すでにあるものを組み合わせてつくり上げていく工作。苔玉づくりは、工作に近いですね。」

なるほどー! そういえば、工作、大好きだったかも……そう思ったら、なんだか無性にチャレンジしたくなってきました。が、今日はしっかりとレポートしなければ。

さてさて、ときに悩み、ときに夢中で手を動かしながら作業を進めていたおふたり。いよいよ2つ目の苔玉も完成しました!

同じ素材を使っても、それぞれに個性があって、美しい苔玉が誕生しました。

「かわいい!愛着湧きますね~。」
とほほ笑む参加者さん。誕生したばかりのコロンとした苔玉に、なんだか赤ちゃんのような愛おしさを感じました。みのりさんのたくさんのアドバイスを吸収しながら、自分の感性を大切にしてつくった、世界でひとつだけの苔玉です。本当に素敵な作品となりましたね!

これからもぜひ、園芸のある暮らしを楽しんでくださいね。

ご参加いただき、ありがとうございました!

 

『四季に寄り添う。季節のしっかり園芸ワークショップ。』
1年を3つのコースに分けて開催しています。 お好きな季節を選んだり、1年を通して体験するなど、ぜひ園芸を通して季節の移ろいを楽しんでください。

四季に寄り添う。季節のしっかり園芸ワークショップ。