こんにちは。てならい堂スタッフの村上です。

気が付けば6月も後半、雨の季節ですね。今年はあまり外出できなかったせいか、例年よりもあっという間に春が過ぎ去っていった気がします。

今はできること、できないことを一人一人が考えながら、探していく時期ともいえるかもしれません。

てならい堂では2か月ぶりの五感体験、染め工場での型染め体験を行いました。お買い物袋を自分で染めるワークショップです。

img_1868

体験場所は100年に渡り着物の反物を染めてきた工房「染めの里おちあい」です。新宿区落合にある着物の反物を染めている本物の染め工房です。

講師の渋谷さんは、フェイスガードをつけながら指導してくれました。広い工房で5人限定での体験です。ソーシャルディスタンスを保ちながらも、久々に人がいる空間で行う五感を通じての体験には、人と繋っている、という安心感がありました。

今回行ったのは「型染め」という技法です。5種類のてならい堂オリジナルの型に色を組み合わせていきます。染料の色を選ぶのも一苦労です。「実際に組み合わせてみないとわからない」「なんだかパズルみたい!」との声も。

img_1861-1

刷毛に染料をつけて、型の上から色を重ねていきます。型を重ねていく工程を体験する事で、江戸の代表的な染め技法である更紗や、着物がどのように染められているか、イメージが湧きました。きっと歴史ある工房で行う染め物体験だからこそですね。

今回は、ひとりひとり色が選べる形式で行いました。でも、「たとえ同じ色を使っても、染め方によって全く色が変わります。」と渋谷さん。「え、この色同じ色なの?」「この組み合わせは涼しい感じがしていいですね!」色を重ねていく度に新しい発見がありました。自分だけではなく、他の人の作品も見ながら新しいアイディアが浮かんでくるのは、ワークショップの醍醐味です。
img_1879

染め終わったあとは蒸し器でじっくり蒸します。渋谷さんからの、どれが誰のかわからなくなるかもしれないので、名前シールをつけますか?との質問に、自分の作品はわかるから大丈夫!と皆さま。それもそのはず、どれも個性がしっかりとでて、雰囲気の違う素敵な作品に仕上がっていました。

蒸し器を開けると、ふわ~っと蒸気とともに木のいい香りが広がります。なんだか、サウナみたいです。

img_1886

この「染めの里おちあい」は、以前、てならい堂と一緒に型染め体験「染め屋塾」を開催していた「二葉苑」が、100周年を機に組織を株式会社から一般社団法人にリニューアルした工房です。今回、二葉苑では、「100年愛される着物展」が行われており、なんと作品を蒸している間に、そちらも見学することができました。

img_1926

明治時代から今まで100年間着続けられてきた着物を見ると、なんだかタイムスリップをしたような気持ちになりました。この100年間で様々なことは変わったけれど、100年前も二葉苑は着物を染めていて、この着物を着ていた人がいたと思うと、人の想いと一緒にしっかりと変わらず守り続けられてきたこともあるんだな、と。

着物は、何度もほどいて縫い直すことを前提とした、和裁の技術で作られています。今、「エコ」や「リサイクル」が唱えられていますが、そんな言葉を知る前から、昔の日本では自然な形で、ものを大切につかったり、再利用をしていたのではではないかと思います。

私たちが五感を使って本物に触れて、モノとの関係性を思い出すことができれば、自然とそんな心も戻ってくるかもしれませんね。

着物展のあとは、いよいよ作品の出来上がりです。

img_1940

「どれも違う季節を表してるみたい!」「これはなんだかやわらかい感じがしますね」どの作品も色鮮やかで素敵です。「写真とってもいいですか?」と参加者の皆さまもお互いの作品の写真を取り合っていたのが印象的でした。「プレゼントにするんです!」とおっしゃてた方も!

こんな素敵なお買い物袋があれば、お買い物もいつもよりもワクワクしますね。

東京で育った私は、小さいころからまわりにはコンビニがあり、なにか欲しいものがあるとすぐに近くのコンビニで購入してビニール袋をもらうというのが当たり前でした。それが生活の一部であり、違和感はありませんでした。でも、自分のお買い物袋を持つようになってから(もちろん忘れてしまうこともあります!笑)、毎回使い捨てのビニール袋をもらうことに違和感を感じるようになりました。

今は普通だと思っていることは、100年前には普通ではなかったり、実は長い人間の歴史の中では使い捨ての文化はとても短いものなのかも知れませんね。

2か月まえには、こんなに長くおうちにいることも、大人数で集まれないことも考えられなかったけれど、今はそれが新しい日常になりつつあります。私たちの「当たり前」は実は思っている以上に簡単に移り変わっていってしまうものなのかもしれません。だからこそ、自分の本当に信じられるもの、大切にしたいものにふれて、体験して、見つめ続けていくことは、思っている以上に大事なことなのかもしれません。

参加者の皆さま、染めの里おちあいの皆さま、ありがとうございました!