型ごと作ってしまうワークショップ
やきものの「型」のこと考えたことありますか?いや普通は無いですよね。
やきものと言うと、やっぱりイメージが強いのは、ロクロを回す陶芸的なことになるのでしょうか。
実際のところ、暮らしの道具として使われているやきもののほとんどは、型を使った量産品。
ただ量産とは言っても、完全なオートメーションという訳ではなく、型をつくる、陶土を流し込む、表面を削る、磨く、色を付ける、窯に詰める、絵付けをする、、、と、ほとんどの工程が手仕事に支えられる手工業です。
この手仕事の集合体を量産足らしめてるものが、「型」なのです。
同じ型を使うから、同じ形の飯碗や酒器が量産できる。
確かに、一点ものの作家さんの器は味わい深い魅力がありますが、一方で、多くの職人の技術によって優れたデザインが実現し、多くの人に届けられ、使い続けられるプロダクトにも、また別の魅力があると思います。
そうした多くの技術と知恵に支えられたプロダクトの元となる型に想いを馳せる機会はなかなか無いかもしれません。
量産の陰に職人の芸術あり
型と言っても色々とありますが、主流は石膏型。
石膏は安価で、削るなどの加工がし易く、吸湿放湿に優れるので、流し込む液状の陶土の水分を吸い上げ、乾かすのにピッタリの素材。
型屋さんの作業場は石膏の白色にまみれていました。
同じ形のものをたくさん作るために型を使う訳ですが、一度に何個も作るためには、寸分違わぬ同じ型を何個も作る必要があります。
つまり、型を作るための原型が必要となります。
エム・エム・ヨシハシさんでは、この原型を石膏を回転体に載せて、小刀で削りだして作っていました。
型による量産のうつわであっても、大元となる原型は、完全なる手作業による作品。
結局のところ、日本のものづくりは、手仕事による技術の極みなのです。
型ごと作ってしまうワークショップ
今回はそんな「型」の役割を型屋さんに学ぶワークショップをやることにしました。
作るのは箸置き(もしくはブローチ)ですが、ただの箸置き作りでなくて、その型ごと作るワークショップってちょっと他には無いと思います。
なんせ、型が手に入りますので、その後の量産も自由自在。笑
実際にはやきものなので焼き上げる必要がありますが、最近はオーブン粘土というものが売られていて、これを使えば理論上は、本当に家で箸置きが量産できるはずです。
今回のワークショップでは原型から作るには時間が足りませんので、あらかじめ、型屋さんで用意してもらったいくつかの原型の中から選んでもらい、これに石膏を流し込んで、型作りを体験してもらいます。
でき上がった型には、彫刻刀を使って石膏の加工なども少々。
この型に陶土を詰めて、型を外せばマイ箸置きが形になります。
(後ろに安全ピンを付ければ、ブローチにもなりますね。)
この粘土をお預かりして、焼き上げた後にお送りする予定ですが、調整がうまくいけば、その場でオーブンで焼き上げるパターンも試してみたいと思っています。
その場で焼き上げる場合は、焼き上がりと乾燥で2時間程いただくこととなりますので、その間はお買い物や食事等で、ゆっくりと時間を使って頂ければと思います。
もちろん、型屋の職人さんにお越しいただくのですから、実際の製造工程や、産地でのモノづくりの話もたっぷりしてもらおうと思います。
型屋の技術を残すために
やきものの町、瀬戸。
その昔は、関東ではやきもの自体が瀬戸物と呼ばれるほどに、メジャーな生産地のひとつです。
その瀬戸のやきものは完全な分業制。
窯、型、素地、釉薬などそれぞれの専門会社がそれぞれの役割を担ってきました。
しかし、市場は縮み、分業を支えてきた業界構造全体を維持できなくなってきて、部分部分に廃業する会社が出る様になり、、、そういう状況になってからも随分と時間が経ちました。
型屋が型だけを提供していれば良い時代は終わりました。
いや、正確には、多くの型屋さんはまだ、型を提供するに留まっているでしょう。
その中で、エム・エム・ヨシハシの吉橋さんは、自社ブランド「彫付(HORITSUKE)」を立ち上げ、直接生活者の声を聞くモノづくりを始めました。
型屋がブランドを立ち上げるなどということは、かつての生産地社会では考えられないこと。
しかし、敢えて自らそこに踏み込むことで、型屋が型だけを提供していれば良い時代を、自ら終わらせようとしています。
理由は一つ。
受け継いで来たモノづくりを続けるため。
吉橋さんは、生活者と向き合うことで、自社の技術だからできる、この時代だから求められるモノづくりを追求しています。
寡黙そうでいかにも職人気質でいながら、内面はこんなにも熱い吉橋さんと、いつか、一緒にモノづくりを伝えたいと思っていました。
今回実現したこの機会を、どうか、みなさんに体験してもらいたいと思っています。