綿糸を紡ぎ、原始ばたで織り上げる。古民家で“布衣”作り。2日間
綿から糸を紡ぎ、原始ばたという道具を使って織り上げていく、一連の技術を学んでみませんか。
千葉県君津市にある古民家「染織伝承館」に伺い、2日間かけて行うこのワークショップでは、藍染の木綿糸を使ってストールサイズの布を作ります。
機織をやってみたいという人や、自給自足に興味がある人、天然繊維の布が好きな人に向けた内容となっています。
シンプルで場所を取らない原始ばたの道具ごと持ち帰るので、大きな織り機だと室内に置く場所が無いという人でも、学んだ技術を生かしてご自宅で継続して織ることができますよ。
ところで、布衣(ふい)という言葉をご存知でしょうか。「一般庶民の着る麻や綿の服」という意味があって、少し前までは暮らしの中で作られ、普段着として用いられていました。
有名な織の技術はたくさん残っていますが、普通の暮らしのいとなみの中で使われてきた、無名の「生活のちょっとした織の技」で作られる布衣は、今、急速に失われつつあるんです。
その技術を次の世代へと繋いでいくために、全国各地の年配の方々を訪ね、教えてもらった手わざを伝えていく活動を続けている「布衣風衣(ふいふうい)」の渡辺一弘さん、豊子さんご夫婦から、糸紡ぎと機織の技術を学びます。
原始ばたは腰機ともいい、自分の体で経糸を張って織り上げていく織り方のことで、最小限の道具ですみ、場所を取らないのが良いところ。その道具ごと持ち帰って、ご自宅で完成させるのが目標です。
連続2日間かけて行うこのワークショップ、1日目は布に使われていた素材を知るところからスタート。
主に木綿の話が中心ですが、木綿以前の布として利用されていた麻や、自家用に作っていた絹のお話も、貴重な動画資料を交えながら伺っていきます。
全国各地から集めたという布や昔の道具類は、かつて、博物館で機織や手紡ぎなどの企画展示を依頼されたこともあるくらい、とっても貴重な資料なんです。実際に見て触れることができるのは、ここならでは。
お話を伺った後は、綿に触れていきましょう。収穫した綿にはまだ種が残っているので、専用の道具で種を取り出す工程があったり、そのままだと固いので、ふわふわにする工程なんかもあったりします。
シンプルな道具ながらも、綿から種が取り出されていく様子や、ふわふわにするための工夫に驚きますよ。昔ながらの知恵ってやっぱりすごい。
その後は、綿から糸にするまでの工程を学び、実際に体験して、どんどん綿糸を作っていきます。
ふわふわになった綿を丸めた「よりこ」を作り、その端をつまんで引き出しながら撚(よ)ると糸になります。それを糸車につなげば、糸紡ぎの準備はOK。糸車のハンドルを豊子さんが回すと、みるみる糸が撚れていきます。
でもいざやってみようとすると、途中で糸が切れたりして、思うように進まず焦るかもしれません。もちろん初めから上手にできなくて当たり前。均一な太さでなくても大丈夫。むしろその方が表情のある素敵な綿糸になりますよ。
ただ、この時間で作れる数量はごく僅か。できた綿糸は緯糸に織り込んでも、持ち帰ってもどちらでもお好みでOKです。布に織り込んだ場合は、仕上りサイズのうち数cm分程度を自作の糸で織ることができます。
2日目は、原始ばたという道具で布を織り上げる技術を学びます。原始ばたという名前の通り、機織り機としては最もシンプルな形の道具ですが、しっかりと織り上げることができる優れもの。
原始ばたは、片側を腰に据えて、もう片側を柱や自分の足に固定して織っていくスタイル。経糸(たていと)がくるっと一周しているので、最後まで織り上げると、輪っかになったストールが完成する仕組みです。もちろん輪っかにせず、1枚のストールにしてもいいですね。
織りやすくするため、こちらにある藍を使って手染をした木綿糸も使い、2色を使って織っていきます。
縦糸、緯糸共に、予め必要な分量は用意してありますが、自分で紡いだ糸も緯糸に織り込むことで、より味わいのある布衣になることは間違いありません。
織のコツを掴むことが出来たら、残りの時間は糸紡ぎを行ってもOKです。
ここでちょっとお願いが。原始ばたを支えるのに、腰布が必要なんです。貸し出しできるものにも限りがあるため、ご自宅にあるフェイスタオルくらいの大きさのタオルを持ってきてもらえたらと思います。
縦方向に半分折り、さらに半分折って細長い形にし、その両サイド10cmくらい折り返したところで縫っておいてもらえると、後はこちらで紐を通すのでその後の作業がスムーズになります。
針と糸はあるので、タオルがあれば当日こちらで縫うこともできます。詳しくはお申込み頂いた方に別途ご案内させて頂きますね。
江戸時代末期の間取りで建てられているというこちらの古民家、もともと新潟県十日町市にあったものだそう。はるばる千葉まで移築し、染織伝承館として活動をスタートさせたのが今からおよそ15年前。昔ながらの土間があり、懐かしさと安らぎを感じるとても素敵な空間です。
心地よい風が建物内を吹き抜けるのを感じると、自然と呼吸も深くゆったりしたものになっていることに気付かされるのではないでしょうか。
土間や縁側があり、長閑な景色と共にゆったりと過ごす時間が、今ではとても贅沢に感じます。ここで過ごす時間そのものも味わってもらいたい、とてならい堂は考えました。
手間がかかったり、不便だったり、無駄だと思うところで人間の精神は回復しているのだと思う、と渡辺さんは言います。商業化されない(できない)自家用としての布衣の価値は、この辺りにもあるのかもしれません。
ちなみに、5月は綿の種蒔きをする季節。今回5月に開催するのも、実はそこに理由があるんです。な、なんと、畑の一区画をてならい堂エリアにしてくださるとのこと。せっかくの機会なので、綿の種を蒔く体験もやってみましょう。
順調に育てば、おおよそ9〜11月に頃かけて徐々に綿の実が笑み、収穫できるそうです。
自分たちで育て、収穫し、糸を作り、機織をして布をこしらえ、仕立てることで出来上がった衣服は、どんな想いで着られていたのだろう、と想像せずにはいられません。
道具でさえも、身近にある素材を使って作れるものは自分で作り、壊れたら直す。生活の知恵があることは、どこでも生きていけるという安心感に直結しているなと感じます。
手から手へ、人から人へ。生活のちょっとした技術を、次の世代に伝えていきたいと願う渡辺さんご夫婦の想いは、てならい堂の理念とぴったり重なりました。
ぜひ訪れてもらいたいこの場所で、季節と共にある生活を感じながら、糸から一緒に「布衣」を織り上げてみませんか。 皆さんのご参加をお待ちしています。
※3月8日(火)10時迄はサポート会員限定の申し込みになります。
サポート会員へのお申し込みはこちらから
【開催場所】
染織伝承館「布衣風衣」
千葉県君津市糸川424
【開催場所までの行き方】
※東京方面からお越しの場合は、バスが便利です。
バスの場合
東京駅発の高速バス(日東交通・東京ー君津線)に乗り、君津バスターミナル下車。
そこからタクシーで約10分。
※安西タクシーなら布衣風衣といえば場所が分かります。
※お車でお越しの方は案内図を送りますので、その旨お知らせください。
2日目:2022年5月8日(日)10:00~15:00 連続2日間
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