“深める金継ぎ”と“初めての蒔絵”教室〜22年春の火曜(昼の会)、割れた器編
金継ぎを生涯の趣味にしていきたいという人に向けて、金継ぎと共に、その装飾の源流である「蒔絵」の技法についても一緒に学ぶ教室です。
蒔絵、それはそれはディープな世界。けれども敷居を下げて多くの人に参加してもらいたい、という気持ちに変わりはありません。漆という素材、そして技術を愉しく生活に取り入れることに、一緒に取り組んでみませんか。
てならい堂(ひみつの小店)にて毎週火曜(午後)に開催し、2ヶ月で一連を学ぶことができます。
てならい堂の中の他の金継ぎ教室との違い
自分で直すということは手に入れ方を変えることなのだと、てならい堂は捉えています。
世にはいろんな金継ぎの手法があって、ブームに乗ってとっても手軽にしたものもあるけれども、てならい堂ではこれまでずっと、本物の漆を使い、漆の性質を生かした古くからある金継ぎの技法にこだわってきました。
何が「本当」「本物」かはそれぞれの価値観で一つではないと思いますが、てならい堂は単純に自然素材である「漆」の魅力に惹かれ、その分手間はかかるけれども、きちんとその手間を掛けることが、安心な使い心地、綺麗な仕上がりになると教わったので、これまでずっと、きちんとそのやり方でやってきました。
そして、手間と時間がかかるそのきちんとした金継ぎをできるだけハードル低く、愉しく身につけてもらいたいと思い、全く金継ぎの経験がなくても、一連のきちんとしたやり方を学んでみたい人、大切な器を壊してしまって自分で直してみたい人に向けて、初めての金継ぎと題して教室を展開してきました。
けれど、これまで数年間の教室運営の中で、「これは一生涯の趣味にしたいぞ」という方も多くいらっしゃいました。こちらの教室では、金継ぎと、その装飾の源流となる漆工芸の「蒔絵」と呼ばれる技法についても一から同時に学ぶ教室となります。
器の破損には大きく「欠け」と「割れ」がありますが、この深める教室では、そのどちらかに絞って深めながら取り組んでもらいます。火曜の午後は「割れた器」編で、割れた器の修復に集中します。(別で開催する「初めての金継ぎ教室」では、一回の教室で「割れた器」と「欠けた器」の両方の直し方を一度に学びますので、一旦、両方を一緒に体験してみたいよーという方は、こちらの教室もご検討ください。)
全く経験がなくても、もちろん参加OKですので。
今回は午前に「欠け編」、午後に「割れ編」を開催します。午前と午後の両方申し込みも大歓迎です。
蒔絵を学ぶ意味
蒔絵(まきえ)と聞いて皆さんはイメージできるでしょうか。蒔絵とは、漆で書いた絵や模様の上に金や銀などの粉を蒔いて装飾する技法のことです。ピカピカに黒く光る漆の器に施されたキラキラした金の装飾。それは、私たちが漆と聞いて最初に思い起こす”高級なイメージ”そのもの。ともすると、それは美術品や高級料亭のもので私たちの生活に関係ないのでは?と思う人もいるかもしれません。
けれどもその思い込みは、単に私たちが”ちゃんと触ったことがない”というだけのことだと気づきました。金継ぎは、漆の接着剤としての側面、塗料としての側面を両方を活かして、接着した線の上を金粉で装飾して完成します。この装飾こそが蒔絵の技術に由来します。
シンプルさがもてはやされる時代も長く続いていますが、シンプルな中に少しの装飾が生活に彩りを与えてくれます。だから、真っ白なお皿に一筋の無造作な金のラインを引いて仕上げる金継ぎは、今の私たちの気分に合っているのかもしれません。
この装飾、加飾の源流である蒔絵を知り、身につけることは、生活の中で金継ぎはもちろん、漆の器の装飾を直したり、自分で加飾ができるようになることを意味します。
もちろん私たちはつくり手の養成を目指していません。伝統技術を保存する会でもありません。漆工芸という本来は職人や作家が扱う技術を、生活者自身が生活に取り入れたみたらいいんじゃない?というのがてならい堂のスタンスです。
なんのために?それは、”知っていることできることが多い方が生活は愉しくなる”と知っているからです。仕組みを知っている、自分で直せる、自分で加飾を施せる。そのことで器を見る目、生活の中での扱い方が変わるはずです。
とかくハードルを感じやすい漆。その扱いづらさは、工芸の世界ですら代用品にとって変わられてしまう様な状況ですが、だからこそ、自然素材である漆を”生活者の方”で取り入れ直すということに意味がある様な気がしています。
もしかすると素人が手を出すことを快く思わないつくり手さんもいるかもしれませんが、それは職人の仕事を侵食することではなく、正しい知識を身につけることが、結果として”職人の仕事を買うこと”に繋がっていくはずです。それがそれぞれの役割を果たす正しい循環だと思っています。てならい堂は生活者が蒔絵を学ぶ意味をそこに見出しました。
“行庵さん”と工程と会場について
今回蒔絵につながる金継ぎを教えてくれるのは、蒔絵師の行庵さんです。行庵さんは蒔絵師として、これまでお茶の世界との接点を持ちながら、依頼されてお茶碗に金継ぎを施したり、ご自身の作品を世に出してこられました。一方その活動の中で、漆芸の敷居の高さに危機感を持ち、もっと広くこの蒔絵の世界を知ってもらいたいという思いから、ご自身で金継ぎ教室なども開催をしていました。
「高級品として愛でるのでなくて、日用品として使って欲しい」という行庵さんの思いは、てならい堂の理想と重なります。そこで教室をご一緒させていただくことになりました。
教室は全部で7回です。「割れた器編」では、麦漆を使って接着した後、ほぞを彫って錆づけし、漆を塗り重ねて、そこに金属粉を蒔き、漆で固めて、最後に磨いて仕上げるという流れを7回かけて行います。作業自体は短いものですが、作業の後に漆を乾かす工程(工程によって数時間〜数日間)が入るため、どうしても時間がかかるんです。
また、この金継ぎの作業に並行して「木のブローチ」を使って、蒔絵の中でも平蒔絵と呼ばれる技法で装飾してもらいます。この木のブローチは金沢のアクセサリーブランド”木tch(コッチ)”さんのモノ。ブローチ自体もとってもかわいんですよ。
コッチのブローチを使って平蒔絵の予習をし、金継ぎで復習するという流れで、一連の教室の中で、平蒔絵を2回体験してもらうことができるので、初めての方も平蒔絵の流れをしっかりと理解してもらえると思います。
ご参加お待ちしています
多くの方との繋がりがあって、蒔絵につながる金継ぎ教室といえる新しい教室を開催することができます。本当にありがとうございます。
そして、その先に、漆工芸を生活文化に取り入れていくという、てならい堂のちょっとした願いが叶うならば、私たちの生活はもっと愉しく豊かになると信じています。一緒にじっくりと取り組んでみませんか。
塗師屋 行庵
1981年生まれ。
父、三世黙知に工芸のいろはを仕込まれ、金沢にて、沈金を前史雄氏に、蒔絵・髹漆を市島桜魚氏に学ぶ。
お父さまと共に東大寺華厳茶会記念品制作に携わり、千二百年以上前のものでありながら目新しさすら覚える宝物にふれ、伝統的な図柄の中から新しさを再発見できるような作品づくりをされています。