自分でお札立てをつくるワークショップです。

そんな手作りのものにお札を飾っても良いの?と思ってたら、教えてくれる宮大工さんが「神棚やお社(やしろ)を作ってる私たちも普通の人間ですから」って言われて、妙に納得。

もちろん神様をお迎えするに足るクオリティは、しっかりと前準備で宮大工さんが担保してくれているので、シンプルながらも宮大工の技術の真髄である木組みを体感し、神棚とお札立てについてもあれこれ学べてしまう貴重な体験。

恐る恐るではなく、ちゃんと理解して、お札をお祀りできるようになりますよ。

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神社でもらったお札が、すっきり落ち着くシンプルなお札立てです。

厄除けや合格祈願でお札をもらってきたはいいけど、どこにお祀りしたら、、、なんて時に「神棚」のことが頭をよぎりますが、馴染みの薄い私たちには、ちょっとハードルが高く感じてしまうこともあるかもしれません。

気になって調べてみると、方角さえ間違わなければ、高いところに立てかけておくだけでもいいですよ、と出てきます。つまるところ「神様をどれくらい丁寧にお迎えしたいと思うか」という気持ちの問題。

少しでも座りが悪いなと感じるなら、お札をお迎えする場所を、自分の気持ちに従って用意すればいいのではないでしょうか。

そんなお札立てを自分で作れるって?え?いいんでしょうか、そんなことして?

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今回お世話になる唐箕屋本店の小保田社長。志願して入社させてもらって、こんなに面白い仕事があるんか!と思ったそうです。

「え?いいですよ。だって僕達つくってますし」そう答えてくれたのは、岐阜で130年近く続く宮大工、唐箕屋本店の小保田社長。

ちなみに神棚とお札立てって何が違うのかと尋ねると、「そもそもお札をおうちでお祀りするための棚を神棚と呼ぶから、お札立てだって神棚ですね」とのこと。

元々は神社のお宮の形を模したものが一般的でしたが、生活環境の変化により徐々に神棚もそのデザインを変えてきた、その延長にあるものだそうです。そう聞くと、生活と共にある宗教のかたちとして、とても自然なことに感じられます。

小保田社長も、形式に捉われてお札をお祀りしないよりも、できる形でお祀りして神様を尊ぶ気持ちの方が大切ではないですかと、話してくれました。

今回は宮大工さんからお札など神様のお迎えの仕方の知識も同時に手に入れて、恐る恐るではない、私たちにとってこころよいお祀りの仕方を手に入れてみませんか。

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職人さんが用意してくれる部材一式。これを叩いたり切り落としたりして、組み立てていきます。

「宮大工」という職業を聞いたことはありますか?神社仏閣そのものから、神棚やお札立てなど自宅での神仏にまつわることも、宮大工さんの領域。

宮大工の技の真骨頂は、釘などを一切使わない木組みと言われる技法です。もちろん現代では釘を使うこともあるそうですが、木組みの技法は次の世代に必ず受け継がれていかなければならない技術です。

今回のワークショップでは、背板をのこぎりで切り落としたりと、小学生でもできるちょっとした作業をこなしつつ、木殺しと呼ばれる、大きな神社を建てる際にも使われる、宮大工の技術のエッセンスを感じながらお札立てを組み立てていきます。

シンプルなつくりですから、作業自体はスムースなら30分ほどですので、気軽に参加してくださいね。

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のこぎり。気をつけてね。

さて、神社に使用されるのはヒノキの木。それも木曽檜が良いとされているようです。伊勢神宮にも木曽檜が使われています。

木曽檜は岐阜長野にまたがる木曽谷にひろがる天然林でとれる樹齢100年を超える天然ヒノキを指します。木曽谷は傾斜がきつく、雨や雪も多いため、日照時間が短く木々が育つには厳しい環境です。

けれどもそれ故に、檜はゆっくりと生育し、人工林のひのきと同じ太さになるまでに倍近い、70~100年の時間がかかります。しかし、ゆっくりと育った木曽檜は、木目が細かく弾力があって、反ったり曲がったりしづらくなるそうです。また、色も香りも良いとされます。

増え続ける需要に応えるためには早く・速くつくる必要がある。けれども、それで出来きあがるものは全く同じではなく、何かが犠牲になっています。唐箕屋さんのお客さんでも、人工林のひのきのオーダーだったり、あるいはヒノキに似たもっと安い代替材料のオーダーも増えてきているそうです。

時代の流れもあるし、いろんな事情や考え方があるけれども、木曽檜の意味を伝えていくことも宮大工の使命。だから、今回私たちが作るお札立てにもその貴重な材を台座や鳥居部分に使わせてもらいます。

岐阜の唐箕屋本店さんの工房。無造作に貴重な木曽檜が立てかけられていました。

岐阜の唐箕屋本店さんの工房。無造作に貴重な木曽檜が立てかけられていました。

木曽檜はつまるところ高級材ですし、部材も宮大工さんがひとつひとつ手作業で加工してくれたもの。そこに手間が掛かっています。

何かを体験してもらおうって時に、世の中は”体験だから”とある程度安さを求めがちな傾向もあります。けれどてならい堂はそうは考えません。

体験だからこそ、本物の材料で本物の道具でちゃんとそれを知ることに意味がある。そして体験させてもらった私たちは、それを伝えていく責務があるんではないかと思っています。

金額で価値を判断するのではなく、価値あると思うものに額をつける。そういう大人になりたいなあと思います。

こちらは以前に神棚をつくったときの様子。職人の手解きを受けながら、道具を使いながら組み上げていきます。

こちらは以前に神棚をつくったときの様子。職人の手解きを受けながら、道具を使いながら組み上げていきます。

神棚も宮大工も普通に暮らしていたら少し縁遠いようですけど、実際に話を聞いてみるとそんなことはないですし、私たち生活者ひとりひとりがちゃんと知っていることが、結局のところ文化の伝承につながっていくんだと思います。

そんな難しいことを言わなくとも、檜の香りに包まれて木に触って組み立てる体験は、終わってみて皆さんきっと、楽しかった!ってなると思います。

以前には本格的な神棚を組み立てるワークショップも開催しましたが、今回のお札立てはだいぶハードルが下がりました。私たちの、丁寧に神様をお祀りしたいという気持ちを、まずは形にしてみませんか。