おりんの音色ができるまで。つくり手のお話し会
祈りのための道具であった”おりん”が今、日常の中での心の平穏や集中力を高める存在として、広がってきています。
富山・高岡の地で鍛金の技法でおりんを作り続けてきたシマタニ昇龍工房の島谷好徳さんをお招きし、つくり手本人からそのモノづくり・音づくりの話をじっくり伺って、その唯一無二の音の解釈を深めるお話し会を行います。
鋳造で作られるものと比べて、鍛金では想像以上の手間がかかりますが、その差は音に出ます。
美しい音色を生み出すために、音のうねりを整える一子相伝で受け継がれてきた調音の技は、他では見ることができない貴重なものです。
美しい調和の音色を手と耳だけを頼りに生み出す驚嘆のモノづくりと、その音を一緒に感じてみませんか。
おりんとシマタニ昇龍工房
おりんをご存知でしょうか。日本人であれば、きっと目にしたことがあるはず。おりんは、お寺での読経の合間に、合図としての音を鳴らすための仏具です。
そもそもは祈りのための道具の一つですが、そのおりんが今、日常の中での心の平穏や集中力を高める存在として、広がってきています。
おりんの作り方としては、大きく二つ。型に溶かした金属を流し込む”鋳造”と、金属板を叩いて形にする”鍛金”のニ種類の作り方があります。
量産しやすい鋳造に比べて、鍛金では想像以上の手間がかかります。けれどその差は、音に出ます。
富山・高岡の地で鍛金の技法でおりんを作り続けてきたシマタニ昇龍工房の島谷好徳さんをお招きし、つくり手本人からそのモノづくり・音づくりの話をじっくり伺って、その唯一無二の音の解釈を深めるお話し会を行います。
おりんを知る、モノづくりを体感する
夕方開催のこちらのお話し会では、鍛金と調音の技術にフォーカスしたいと思います。
最初に映像を見ながら、おりん製作の話を島谷さんから伺います。「手で叩く」という行為だけで、どのように一枚の金属を形にしていくのかを根掘り葉掘り聞いてみましょう。
おりんは「甲・乙・聞(かん・おつ・もん)」と呼ばれる3つの音のうねりが整えられて完成するそうです。
うねりは音の波。特別な道具や機械を使うことなく、自らの手と耳と経験だけを頼りに、このうねりを調和させていくのが、島谷さんのモノづくりのハイライト。一子相伝で受け継がれてきた調音の技は、他では見ることができない貴重なものです。
その後、「昇龍 」のおりんをお借りして、その鳴らし方を教えてもらい、島谷さんの手によって調音されたその音を、自分でおりんを鳴らして聞いてみましょう。その製法や技を知った後で聞くおりんの音は、また格別なはず。
音自体の解説も島谷さんにお伺いし、手から生まれるからこそのひとつひとつの音色の違いも、皆で聴き比べてみましょう。
手で叩いて作られるからこその、”本当の”おりんの音を知ってもらいたい。そんなつくり手の想いも一緒に、お話し会で感じてみてください。
(なお同日の朝に開催するワークショップではその素晴らしい音色にフォーカスします。朝の部はこちらから、どうぞ)
一子相伝の調音の技術
てならい堂と島谷さんの出会いは、もう10年以上前のこと。高岡の工房にお邪魔してその工程を見せてもらいました。
おりんを一度叩いてその音を聴いて、その後「カンカンカンカン」と島谷さんが叩いて調音を行うと、大きくうねっていたその音が、すーっと平らな音に整っていくのです。
その技はもはや魔法のようで、今も脳裏に焼き付いています。
島谷さん自身、その域に達するまではお父さんの技を見ながら、数十年の歳月をかけています。
そして、そんな熟練の職人が小さなものでも3ヶ月以上かかってようやく完成する、「昇龍 」のおりん。
こちらの背筋も自然と伸びる様な、手間ひまと価値が詰まっていることを感じさせる道具。だからこそ、この貴重な機会にその音に一度、触れてみてもらいたいんです。
おりんの新しい解釈を
多くの日本の伝統や文化と同じ様に、お寺の数も、お寺に納められるおりんの数も、鍛金で作られるおりんも、そしてその職人の数も、長年に渡って減り続けているそうです。
てならい堂が多くのつくり手から話を聞く中で教わったことは、続けていく・繋いでいくためには、変えてはいけないことと、時代に合わせて変え続けなければならないことがあること。
昇龍のおりんは、長きに渡って手で叩き続けてその音を整える技術を受け継ぎながら、今、祈りの場を飛び出して、人々の生活の中に届けられ始めています。
その音は果たして、癒しなのか、整いなのか、安らぎなのか、無心なのか、集中なのか、あるいは純粋な美しさなのか。その意味を感じて見つけるのは、受け止める私たち次第。そして、ひとりひとり違うのだと思います。
今の時代を生きる私たちにとっての新しいおりんの意味を、その音の波の中に見つけに来てみませんか。まずは一度その音を聴いてみるだけでも。皆さまの参加をお待ちしています。