毎日使っている包丁の切れ味が気になってきていたり、包丁にも種類が色々あって、新調しようにもどれが良いか悩んでいたりしませんか。その悩み、解決するかもしれません。

成田市にある打刃物鍛冶工房に伺って、日本刀製造の流れを汲む六代目職人、石塚祥二朗さんから「火造り」の技法による包丁の作り方と使い続ける方法を学び、使い勝手抜群な包丁を手に入れる、1日かけて行うワークショップを開催します。

台所道具の基本でもある包丁を、叩く時に響く鋼の音の変化を感じながら作って手に入れる。切れ味の良い包丁を使う日常は、台所に立つ愉しみへと繋がっていきますよ。

伝統的な技法で作る、今回の包丁。

伝統的な技法で作る、今回の包丁。

今回作る包丁は、刃渡り14cm前後の大きさのものとなります。ペティナイフと呼ばれる包丁と同じくらいのサイズと言えばパッと思い浮かぶ人も多いはず。ただ、一般的なペティナイフよりもわりと幅広に仕上がるので、普段使いしやすいのが特徴です。

小ぶりなので子供でも使いやすいですし、重い包丁が苦手な方にもおすすめ。細かな飾り切りもしやすく、魚をさばく小出刃包丁用としても。奥様の利恵さんも普段からこちらの包丁を使うことが多いそうです。

持ち手となる柄の部分は槐(エンジュ)、布袋竹(ホテイチク)、共の柄の3種類から選択可能。持った時にしっくりくる柄をぜひ選んでみてくださいね。

持ち手となる柄(え)の部分。左から天然木の槐(エンジュ)、中央が布袋竹(ホテイチク)、右が共の柄。この3種類から選択できる。

持ち手となる柄(え)の部分。左から天然木の槐(エンジュ)、中央が布袋竹(ホテイチク)、右が共の柄。

今回のワークショップでは、まず始めに包丁について知るところからスタートします。包丁の特徴を知り、研ぎ方を学ぶことで、自分で直して使い続ける技術を身に付け、良い包丁を普段使いしてもらいたい。と、てならい堂は考えました。

ご自宅で今すでに使っている包丁の研ぎ方も知ることができますよ。ご自宅の包丁の写真を撮ってきてもらったり、現物をご持参頂いてもOK(どんな素材でも大丈夫ですが、対応頂ける本数には限りあり)です。

午後からは、伝統的な「火造り」の手法で包丁作りを行います。「火造り」とは、熱した鋼を叩いて作る刀鍛冶の技法を伝承した製法のことで、最初にしっかりと叩く作業を行います。鋼を加熱した後、ハンマーで叩きながら薄く伸ばして包丁のカタチに整えていきます。

叩く時の音がきれいに響くようになってくると鋼が伸びやすくて良い状態なのだとか。焦らずに、リズミカルに叩くのがコツだそうです。刃物好きにはたまらない工程ですよね。

砥石には荒砥・中砥・仕上砥があり、それぞれに様々な種類が。おすすめの砥石(荒砥)は、こちらで購入も可能。研ぎの話だけでも非常に奥が深く、面白いですよ。

砥石には荒砥・中砥・仕上砥があり、それぞれに様々な種類が。おすすめの砥石(荒砥)は、こちらで購入も可能。石塚さんから伺う研ぎの話だけでも非常に奥が深く、面白いですよ。

鋼を熱しては、ハンマーで叩いて鍛える作業を約1時間くらい繰り返すことで、強靭で切れ味の良い包丁になっていきます。

一人で叩き続けるもよし、ご夫婦や親子で交代するもよし、ご家族での参加も可能です。「未来を切り開く」願いを込めて、パートナー同士で参加するのも良いですね。

4名の募集ですが、お二人1組での参加も可能です。(その場合1組で1本となります。)作業場は2ヶ所となるため、2組の方に作業を行ってもらう間、残りの2組の方は見学の時間となります。

鍛鉄以降に行う焼き入れ、焼き戻しという作業は、火の温度やかける時間など絶妙なタイミングが求められる重要な工程。高度な技術が求められるので、石塚さんの作業風景を見せて頂こうと思っています。

鉄が冷めるのを待ってからの柄付けや研ぎの工程もあるため、完成した包丁は後日郵送でのお渡しとなります。

火を使うとはいえ、工房内は冷えるので温かい服装で。ポリエステルなどの化繊の服は火の粉が飛び移り燃える可能性があるので、作業の際はGパンやつなぎ、作業着などの綿素材の服を着用してくださいね。

綿の軍手やゴーグルはこちらで用意していますが、作業用の革手袋などをお持ちの方はぜひご持参ください。

正次郎鋏刃物工芸の工房内。工房内の作業台や道具類など、溶接技術を生かし、自分たちで作っているものもある。

正次郎鋏刃物工芸の工房内。工房内の作業台や道具類など、溶接技術を生かし、自分たちで作っているものも。

千葉県成田市にある有限会社正次郎鋏刃物工芸は、外観はモダンな建物ですが、一歩中に入ると昭和38年に建てられた時の雰囲気がそのまま残っている、歴史を感じる鍛冶工房。

日本刀の鍛冶職人として働いていた石塚さんの曽祖父長太郎氏は、日本人の手に合う裁ち鋏、通称「ラシャ切り鋏」の始祖吉田弥十郎に師事します。

そこで培った技術を息子正次郎氏が受け継ぎ、その後、屋号を正次郎鋏刃物工芸と改めました。洋裁、和裁に関わるプロの職人が憧れる裁ち鋏として、使いやすさ、切れ味の良さは折り紙付き。

しかし、現在では刀鍛冶の流れを汲んだ「火造り」の技術で裁ち鋏を作ることができる職人は、全国でも数えるほどしかいません。

鋏は、最初に持ち手である輪の部分を作り、それから刃先を作るなど、工程が多く形状も複雑です。鋏ができれば、どんな品物にも応用が効くと言われているほど高い技術が求められます。

そして、その技術を受け継ぐ石塚さんが作る包丁には、刀や鋏の技がしっかりと生かされているんです。

軽さと切れ味の良さの両方を兼ね備えた石塚さんの包丁と、プロの職人が憧れる裁ち鋏。

軽さと切れ味の良さの両方を兼ね備えた石塚さんの包丁と、プロの職人が憧れる裁ち鋏。

日本で流通している包丁の種類として代表的なものは、大きく分けて「和包丁」「洋包丁」「中華包丁」の3種類。

和包丁は、主に2種類の鋼を合わせて作られ、片方だけ鋭角な「片刃」となっています。切れた食材が離れやすく、断面が美しく切れるのが特徴の一つ。

洋包丁は主に1種類の鋼で作られていて、刃の表面と裏面がほぼ同一角度で研いである「両刃」となっており、肉や魚、野菜を叩き切るような場合に向いています。

石塚さんが作る包丁は、裁ち鋏のように切れ味の良い片刃の良さをそのままに、両刃仕様に研いでいることから、通常の両刃の包丁よりも刃先が薄いのが特徴です。

それによって持った時に軽く、切れ味が良く、食材が付きにくく、切るものを選ばない、良いとこ取りの包丁なんです。

知っているようで知らない包丁のあれこれや、お手入れ方法、研ぎ方、そして魅力について知り、意匠と機能を兼ね備えた包丁を「火造り」で手に入れる今回のワークショップ、石塚さんご夫婦から伺う包丁の話も面白く、奥の深さを感じます。

そして成田といえば、名物がうなぎ。近くに幾つか美味しいお店があるようなので、終了後にぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。皆さんのご参加をお待ちしています。

叩く作業の様子を見せてくれている石塚さん。

叩く作業の様子を見せてくれている石塚さん。

使用しているのは、主に純度の高い白紙や黄紙と呼ばれる鋼。地金に鋼付けをしていますが、そこまでやっているところは殆どないそう。

使用しているのは、主に純度の高い白紙や黄紙と呼ばれる鋼。地金に鋼付けをしていますが、そこまでやっているところは殆どないそう。

鋏ができるまでの工程が、分かりやすく展示されている場所。左の看板は知人が作ってくれたそうですが、肝心な「鋏(はさみ)」の一文字を入れ忘れてしまったとか。

鋏ができるまでの工程が、分かりやすく展示されている場所。左の看板は知人が作ってくれたそうですが、肝心な「鋏(はさみ)」の一文字を入れ忘れてしまったとか。

右側が正次郎鋏刃物工芸の工房。

右側が正次郎鋏刃物工芸の工房。

※9月6日(金)午前10時まではサポート会員優先期間となります。

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